
【現場暴露シリーズ】元悪徳ツアーガイドが全てを語った。「最も稼いだ額は、1日で手取り250万円」〜私が悪徳免税店ガイドを辞めた理由〜
現場暴露シリーズ、第4弾となる今回は、悪徳免税店と契約し、免税店へご案内していた元悪徳ツアーガイドに対し、インタビュー調査を行いました。
現場暴露シリーズ第2弾で取り上げたのは、悪徳免税店の従業員でしたが、今回はツアーガイド。ツアーガイドは従業員よりも訪日観光客に近く、直接の接点を持っています。遂に、役者が揃いました。
今回インタビューに協力してくださった方は、「元」悪徳ツアーガイド。半分、騙されたような形で悪徳ツアーガイドの仲間入りをし、一度は人道を外しかけるも、ある時、良心に気付き、現在は別の業務に従事されている方です。
「買わせるテクニック」や「脅威の報酬体系」など、様々な内情を教えていただきました。是非、ご覧ください。
調査項目
- Q1. どのような経緯で悪徳ツアーガイドになったのですか?
- Q2. 悪徳ツアーガイドはどのような研修があり、どのような報酬体系になっているのですか?
- Q3. 高額のバックがあるということは、それだけ高い金額でお客様は買っているということだと思いますが、罪悪感などは無かったのですか?
- Q4. 商品が売れないことによって、会社から怒られたりすることはあるのですか?
- Q5. 全部でどれくらいのツアーガイドが存在しているのですか?
- Q6. 訪日観光客に売るための「いかに買わせるか」というマニュアルがあるという噂は本当なのですか?
- Q7. なぜ、そこまで内情を話してくださるのですか?
- Q8. どうすれば悪徳免税店は日本から無くなると思いますか?
Q1. どのような経緯で悪徳ツアーガイドになったのですか?
私はもともと飲食店を経営していました。しかし、軌道に乗せることができず、自分のお店は畳むことになりました。
母親が旅行者向けの焼肉店を経営していたため、そこで働いていたところ、とあるツアーガイドから「君もガイドをやってみない?」と誘われました。
その時は、「お客様と同じバスに乗って、お買い物に付き合うだけでお金が入ってくる。簡単だよ。」としか、言われませんでした。
そんなに簡単にできるなら…と思い、話に乗ったのがきっかけでした。
Q2. 悪徳ツアーガイドはどのような研修があり、どのような報酬体系になっているのですか?
私を誘った先輩ツアーガイドは、何も教えてくれませんでした。ガイドには、ガイド業務に対する基本給がありませんでした。ランドオペレーターもしくは旅行会社が指定した免税店でお客様に商品を買ってもらうとキックバックとしてお金がもらえる。つまり商品が売れなければ給与は1円も発生しないのです。
それを知って他の仕事を探そうと思ったのですが、先輩ガイドから「君はまだこの仕事の美味しさに気づいていないよ。一回やってみたらどう?結構お金が入ってくるよ。」と言われ、やってみることにしました。
最初の仕事は、富裕層のいわゆるVIPのお客様をツアーガイドするというものでした。9名の日本旅行だったのですが、最初の仕事だったということもあり、一生懸命日本をご案内した結果、お客様と信頼関係が構築されました。
6日間のツアーでしたが、最終日ににしかショッピングをする時間が設けられていませんでした。お客様はスケジュールが決められているので、そこでしかお土産を買うチャンスがありません。
そこでお土産を買わなければ、何も持たずに中国へ帰っていく、ということになってしまいます。とても良い人達でしたので、悪徳免税店に連れて行くことを悩みましたが、9名のお客様は、沢山お買い物をされていきました。
お買い物の総額は、なんと1,000万円。当時契約していたお店のバック率は25%でしたので、私の手元には、6日間のツアーガイドアルバイトを行った結果として、250万円が入ってきました。
Q3. 高額のバックがあるということは、それだけ高い金額でお客様は買っているということだと思いますが、罪悪感などは無かったのですか?
初仕事で250万円という大金を手にしてからは、倫理, 道徳 、全てがお金の前で霞んでいき、どうでもよくなってしまいました。自分が生活できれば全て良い、と考えていました。
悪徳ツアーのガイド依頼は、ランドオペレーターからの連絡によって仕事が入ります。
最初の仕事で1,000万円を売り上げた私は一気に注目を集めましたが、たまたま運良くVIPツアーをご案内して発生した売上が、何度も続くことはありませんでした。
ツアーガイドとしての経験も無く、日本のこともよく分かっていない状態でご案内をしていたこともあり、旅行者さんと信頼関係を構築することが出来ず、商品があまり売れなくなっていきました。
Q4. 商品が売れないことによって、会社から怒られたりすることはあるのですか?
怒られるということはないのですが、売れない時期が続いて、冷たい目で見られることはありました。売れ行きの悪いツアーガイドは、ランドオペレーターからの仕事依頼がどんどん減っていきます。
もともと成果報酬の完全歩合制で働いているためお店としてリスクはないのですが、売れないガイドよりも沢山売ってくれるツアーガイドに仕事を依頼したくなるので、沢山売るツアーガイドには仕事が集中するようになります。
Q5. 全部でどれくらいのツアーガイドが存在しているのですか?
日本全国の総数では分からないのですが、私が契約していた会社は日本でも大手の悪徳免税店でした。
各ツアーガイドはランク分けされ、番号で管理されています。私がガイドとして働き始めた2015年の時点では、登録番号が6,000番台だったため、私よりも前に、6,000名のガイドが登録されていたと思われます。
現在私が働いていた悪徳免税店には、10,000人を超えるガイドが登録されているようです。
Q6. 訪日観光客に売るための「いかに買わせるか」というマニュアルがあるという噂は本当なのですか?
マニュアル化はされていませんが、確かに、いくつかの「買わせ方」は存在しています。
・正攻法
服装をスーツにして安心感を与え、旅行中もしっかりとご案内し、信頼関係を構築しながら日本への興味を持たせ、5泊6日のツアー期間中、徹底的に仲良くなることに努めます。
最終日のお買い物時に、キラートークを使います。
「日本はずる賢い国です。日本製の良いものは日本に置いてあり、悪いものは海外に輸出しています。だから、日本では安心してお買い物をしてください。」
こう言うことで「リアルさ」が増します。必ずしも日本にポジティブな印象だけを抱いているわけではない中国の訪日客の安心感を生みながら、お買い物に対する納得感を与えます。
・旅程のコントロール
主に女性に対して効果が高いのですが、中国人女性は日本人女性と違い、日常的にお化粧をする文化がありません。しかし、日本のコスメ商品への人気や認知度は高まっているため、まずは百貨店にお連れします。
百貨店を一通りご案内し、サンプル品などを試してみていただいた後は、お客様は商品が欲しい状態になっています。そこでお買い物をあえてさせずに、提携している免税店へ連れて行きます。その時も、キラートークがあります。
訪日客「ガイドさん、ここで商品を買っても良いですか?」
ガイド「申し訳ないのですが、今お買い物をする時間がないのです。場所を移動しなくてはなりません。」
訪日客「そうなんですか…。では、次の場所で扱っている場所があったら教えてくれませんか?」
ガイド「もちろんですよ!」
という形で、提携している店舗にお連れします。最も重要なポイントとしては、お客様に「欲しい」と言わせた上で買わせることです。これにより、事後のクレームを防ぐことができます。
・親切心へ訴えかける
30歳〜40歳の訪日客に対して効果的なセールストークです。「弱みを刺す」というやり方なのですが、子供とご両親が大事なのは、世界共通の想いです。
なので、「子供の頭が良くなりますよ」と言ったり、「ご両親の関節痛に効きますよ」といって、健康食品のサプリメントを紹介すると、沢山買っていかれます。
健康食品系は、1万円以上もする高額のサプリメントが複数組み合わされ、おみやげ用のパックになっています。それを何パックも買っていくのですから、必然的に売上は大きくなっていきます。
Q7. なぜ、そこまで内情を話してくださるのですか?
先述したような売り方はフォーマット化されていますので、しっかりと経験を積めば、毎日毎日同じように人間の心理につけこんで、同じように騙す日々が続いていきます。
そこに感情はなく、決まっているフォーマットに言葉を入れて、当てはめたら買ってくれる、という状態になっていました。
しかしある時、私がガイドしたグループにいた子供から、一通の手紙を貰いました。そこには、「日本旅行が楽しい思い出になった。ありがとう。」という感謝のメッセージが書かれていました。
その瞬間、自分自身のやっていることに嫌気が差してしまい、こんな良い人を騙してもいいのだろうか?と、客観視してしまうようになりました。
結果、ツアーガイドとして悪徳免税店でお客様にセールスができなくなる状態になってしまい、健康食品をはじめ、流暢に勧めていた商品紹介のパターンが喋れなくなってしまったのです。
その後、中国のとあるランドオペレーター業者に騙されたことがきっかけで、完全に足を洗うことを決意するとともに、この状況を世の中に広めなければならない、と感じ、内情を話すことにしました。
Q8. どうすれば悪徳免税店は日本から無くなると思いますか?
免税店にお客様を連れて行っているのはツアーガイドですが、激安ツアーを企画しているのは現地の旅行代理店です。最近では、格安航空会社も激安ツアーの組成に加担しています。
費用を抑えて日本へ旅行できることの魅力は非常に強く、そのツアーを支えている悪徳免税店を根絶することは容易なことではありません。
まずは、訪日客が情報に触れて知識をつけ、商品を見分けられるようになることが必要だと思います。
また同時に、ツアーガイドのレベルを上げることも必要だと思います。
「いかにお土産品を買わせるか」
ではなく、
「いかに日本を楽しんでいただけるか」
という視点で仕事をしていってほしいです。
最近になってCCTV等で少しだけニュース番組に報道されるようになりましたが、まだまだ中国では日本に悪徳免税店があることは何の報道にも出ていません。
旅行業界の中ではみんな知っているのに、その存在が隠されています。
存在が明るみにならない要因のひとつとして、中国には「クレームを無視する」という文化があります。悪徳免税店は、どうすればクレームを防げるか?という観点で様々なリスクヘッジをしています。
上述した「買いたい」とお客様に言わせてから買ってもらう方法もありますが、ある店舗では、悪徳免税店へ入店する前に訪日客からサインを貰います。お客様は、旅程の都合上そこでお買い物をするしか方法がない状態におかれているので、サインせざるを得ません。
その後クレームがあっても、サインをしたから連れて行ったんですよ、と言えば、手出しができなくなるのです。
以上、現場暴露シリーズ第4弾をお届けしました。良心に従い、悪徳免税店と契約しているツアーガイドの現状をお話してくださったご協力者様に感謝いたします。
一人でも多くの訪日客にこの情報が届き、被害が減ることを祈ります。