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【ブロガー・インタビュー】30都道府県を歴訪、27万人以上のFacebookファンに日本の旅情報を発信するタイの人気ブロガーが語る、地方創生の課題と対策。

今回は、弊社が先日リリースした正直な口コミサービス 「 All Asia KOL 」 において、訪日情報の発信で影響力が強いタイのカリスマブロガー、Tanong Prakuptanon(タノン・パクッターノン)氏に、タイ人観光客の訪日旅行トレンドについてインタビューを行いました。日本の地方観光情報についても詳しいTanongさんが、タイからの集客力を上げるための秘訣を伝授します。

Tanong Prakuptanon(タノン・パクッターノン) とは

Tanongさんは、日本のことが大好きで訪日回数は50回以上にも上り、これまで30以上の都道府県を歴訪した経験がある。Tanongさんの訪日情報に特化したFacebookサイト、「Japanthaifanclub」 には27万人以上が 「いいね!」 をつけており、タイ語で発信されている日本情報のFacebookページの中ではリーチ数は1位を誇る。タイ国際旅行フェア( “Thai International Travel Fair” )では、日本の協賛企業と共に日本の観光情報発信に寄与し、タイと日本を結ぶ架け橋となるべく様々な活動をしている。2014年8月に放送されたフジテレビ「報道2001」では、Tanongさんの「地方創生」に関する活動も取材されている。(取材動画は後述)

Tanongさんが発信する訪日情報サイト

  • Japanthaifanclub 」:タイの訪日情報Facebookページではファン数で4位だが、リーチ数は1位。
  • Japan Wow! 」:タイ人観光客がガイドブックとして使うほどの情報量を誇るブログ。

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質問項目

  • Q1. 日本に興味を持ち、訪日旅行ブログを書き始めたきっかけは何ですか?
  • Q2.  過去10年間で、タイ人観光客の海外旅行スタイルはどのような変化がありましたか?
  • Q3. 今年10月のタイ国王崩御に伴う「娯楽自粛」ムードは今後も訪日旅行需要に影響はありますか?
  • Q4. タイ人観光客は訪日旅行で何を求めているのですか?
  • Q5. 地方自治体がタイ人旅行者の集客を増やすのに重要なことは何ですか?

Q1. 日本に興味を持ち、訪日旅行ブログを書き始めたきっかけは何ですか?

初めての訪日旅行は定番の「ゴールデンルート」団体ツアー。

初めて日本に訪れたのは10年前で、旅行の明確な理由はなく、偶然でした。10年前、タイ・バンコクの携帯電話販売店(日本のAUやSoftbankに相当)の数店を統括するマネージャーでした。その年は、通常よりも多めのボーナスを貰い、アメリカとヨーロッパは以前に渡航経験があったので、東南アジアよりも遠出できる国として日本を選びました。団体ツアーで東京から名古屋をへて大阪に向かういわゆる「ゴールデンルート」を巡り、初めての訪日旅行は可も不可もない経験で、再来訪に対しても特に強い意欲があったわけでもありませんでした。

広島の団体ツアーが完売し、個人客として訪日。タイ人が日本で迷わないようにと親切心から日本情報をブログで発信し始める。

二度目の訪日旅行は2年後のことでした。バンコクで開催された旅行フェアで、宮島の写真を見た時に広島へ実際に行って自分の目で見てみたいと思ったのがきっかけでした。そのイベントでは広島への団体ツアーはすでに完売になっており、旅行初日と最終日に大阪を巡る団体ツアーに申し込み、広島への旅程は自分で立てることにしました。広島では国際的に有名な原爆ドームや宮島の日本独特の風景を友人に共有したいと思い、ブログを書き始めました。そして、ブログの読者が、日本で迷わずに目的地につけるように、写真に矢印付きて行き方の詳細をタイ語で説明し始めました。その当時、Google Map などの地図アプリは今ほど発達していなかったので、私のブログを参考に旅程を立てているタイ人観光客が増えていったのを感じました。読者の中には、私のブログを印刷してガイドブック代わりにする方もおり、無名のブログが訪日旅行の情報源として今ほどの人気になるとは予想もしていませんでした。

タイの旅行者同士が訪日情報を共有し合うコミュニティーを作りたい。

自費で日本へ渡り、そこでの貴重な旅行情報を無償でブログに共有していることに対して読者から感謝のメッセージをもらうことがありました。ブログを広告だと考えていないので、もちろんウェブ広告の貼り付けは一切しておりません。私のブログをきっかけに訪日されたタイ人旅行者が日本の情報をもっと拡散することで、旅行者同士が訪日旅行情報を共有し助け合えれば幸いです。

Q2. 過去10年間で、タイからの海外旅行スタイルはどのような変化がありましたか?

小旅行だと香港とシンガポールが人気。長旅だとアメリカとヨーロッパ。

タイからの渡航先として、香港とシンガポールは昔から根強い人気があります。人気の理由として、タイから地理的にも近い国であることに加え、ブログやガイドブックなどの情報源が充実していることも安心材料になります。地理的に遠いアメリカやヨーロッパも人気はあるのですが、フライトの時間が長く、渡航費用も高くなります。香港やシンガポールよりは遠いものの、アメリカやヨーロッパよりは近いという位置にある日本は、「遠出したいがフライト時間も渡航費用も抑えたい旅行者」にとっては丁度良い距離に位置しています。

タイ人にとって、日本は以前より旅行しやすい国になった。

10年前には訪日旅行に対して多くの障壁がありました。ごく限られた一部のタイ人サラリーマンが日本へ旅行に行っていた、という印象がありました。問題点としては、「旅行費用が高い」, 「観光ビザが必要」, 「言語の壁」 がありました。LCCの就航や円安の影響で渡航費用が減ったことや2013年7月に施行されたタイ人観光客への渡航ビザ免除の影響で最初の2つの問題点は以前より重要ではなくなりました。そして「言語の壁」 に対しても、日本人が英語を話せないと思っているタイ人は依然と多いのですが、Facebookで日本旅行の口コミが増えたことにより、タイ人の日本旅行に対する心配は以前よりも和らいでいます。

東北大震災が日本を「旅先」として意識したきっかけに。

2011年3月11日に発生した東北大震災の直後、タイの街中では 「 Help Japan 」 の文字が書かれたポスターを持ち、日本への募金を呼びかけをする人を多く見かけました。その当時の日本支援に対する強い国民感情からか、多くのタイ人旅行者は日本は言語が違えど旅がしやすい国としてFacebookで口コミが拡散しました。タイ国民が日本を「旅行先」とて意識し始めた出来事でした。タイの若者の多くは幼少期にドラえもんなどの日本のアニメを見て育ち、日本の文化に対してもともと親近感を持っています。近年、タイでは多くの日本食レストランが進出し、日本に行って本場の日本食を味わいたいと思う人は沢山います。

補足:東日本大震災後の海外からの義援金額を見てもアメリカと台湾に次いでタイは3番目に多い。そして、農林水産省によれば、被災した福島県といち早く農作物の取引を再開したのはタイでもある。タイの親日国ぶりは顕著である。

タイ国際旅行フェアで日本は圧倒的な人気がある。

今年2月に開かれたタイ国際旅行フェア( “Thai International Travel Fair” )では、日本のブースの前にはUSJやJRパスを求める人で長蛇の列をつくり、他の国と比べて日本の圧倒的な人気を感じました。

Q3. 今年10月のタイ国王崩御に伴う「娯楽自粛」ムードは今後も訪日旅行需要に影響はありますか?

タイ国王崩御による「娯楽自粛ムード」は薄れてきている。

70年に渡って国政の安定化に貢献してきたタイ国王の崩御はとてもショッキングな出来事でした。ただ、タイ国民の「娯楽自粛」ムードは一時的なもので徐々に薄れていくと思います。桜の時期とも少し重なるタイ正月(来年は4月13日から4月17日まで)にはタイ人旅行客は例年通りの水準までには回復すると思います。最近、円がまた安くなってきており、タイからの旅行客がむしろ増える可能性は十分あります。

補足:弊社ランドオペレーター事業部のタイ担当によれば、タイ国王の崩御(2016年10月13日)で10月分の団体ツアーはキャンセルまでにはあまり至らず遂行されたが、タイの行政関係者からのキャンセルが入るなど一部の予約は影響がありました。11月に入ってからの訪日ツアー予約は例年よりも減りましたが、12月に入ってからは回復してきています。

Q4. タイ人観光客は訪日旅行で何を求めているのですか?

タイ人訪日旅行客の4階層ピラミッドモデル

(以下、Tanongさん自作の図)

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  • 第1階層:島根, 鳥取, 岩手 などの都市部から遠い地方のルートを選ぶ訪日リピーター
  • 第2階層 :東京, 大阪, 北海道 などの一般的な人気ルートを通る訪日FIT客
  • 第3階層:団体ツアーを選ぶ家族客や訪日初心者
  • 第4階層:日本への渡航経験がない人

私はタイ人訪日旅行客を4段階に分けて考えています。客層の人数比は、上記の第1階層から第4階層の順に少なくなっていくピラミッド階層だと考えてください。時間が経つにつれて、最上層の旅行者も着実に少しづつ増える一方で、今後も大幅に増えるのは第2階層と第3階層に分類される訪日経験が比較的浅い客層だと思います。第1階層は旅館や食事処を吟味したり、7人ほどの家族だと運転手を手配し自由に地方を巡る方もいます。タイ人観光客の特徴として、祖父母や甥姪を連れた家族客も多いので、個人旅行者として日本を訪れるのは心配です。タイ人観光客の訪日団体ツアーのニーズは今後も続くと思います。

タイ人観光客が訪日旅行中に求めるニーズ(以下、需要が多い順)

  1. 買い物(東京はアメヤ横丁, 大阪は心斎橋と道頓堀, 名古屋は大須商店街 が人気)
  2. 食事(回転寿司, 一蘭ラーメン, カニバイキング, 鉄板焼き が人気)
  3. 風景(桜, 紅葉, 富士山)
  4. 文化

以上の4つの訪日ニーズを満たす地域は都市部に集中する傾向があり、地方の集客力はどうしても都市部に比べて弱くなってしまいます。ただ、訪日経験が浅い客層を地方に集客するにはこの4つのニーズを意識する必要があります。

タイ人観光客はお金を貯めて日本での買い物を楽しむ。

タイ人観光客は、日本での買い物に予算を付けない方も多く、気に入ったものがあれば値段が高くても買う傾向があります。ただ、タイ側の税関で抜き打ちチェックもあるので、転売目的の爆買いは少なく、一人当たり免税額である20,000バーツ(日本円でおよそ64,000円)を遥かに超える派手な買い物出費はできません。タイでは自分自身の買い物だけでなく、旅先で家族や友人のためにお土産を買う習慣があります。訪日中の買い物で人気なブランドは、日本ブランドであるアシックスのオニツカタイガーだけでなく、最近タイで人気があるアディダスのNMDモデルなど幅広いファッションブランドにタイ人旅行者は興味を持っています。タイ人女性の間では資生堂などの化粧品ブランドも人気です。日本で買い物をする理由として、偽物が売っていないという安心感もあります。

日本食のイメージが定着し、地方グルメの認知には時間がかかる。

食事はすでに日本食として定着している 回転寿司, ラーメン, カニ, 鉄板焼き などが人気です。地方の名物グルメをブログに載せてもファンからの反応は薄い傾向にありますが、ファンからのコメントで良い口コミが拡散することもあります。例えば、ブログのファンが「予約ができないほどの人気」という投稿して、ファンからの注目を浴びることもあります。

風景は旅のきっかけ。日本文化に対する記述は反応薄。

風景では、「桜」, 「紅葉」, 「雪」, 「富士山」 など日本独特で写真映りが良い地域が好まれます。合掌造りで有名な白川郷は 東京, 大阪, 名古屋 から近くはないのですが、その風景を実際に行って見ることがタイ人観光客の旅のきっかけになることもあります。日本の文化や歴史についての投稿はファンからの反応が薄く、一部のコアな日本ファンしか興味がないのではと感じています。

女性を意識した観光地の発信が重要。

タイの一般家庭では女性の影響力が強く、旅程も女性の意見が反映される場合が多くあります。タイ人男性は女性の意見を尊重し、優先する傾向があります。旅行中の出費も女性の方が決定力があり、体験出費では「着物」や買い物需要では「化粧品」への出費が多くなります。

Q5. 地方自治体がタイ人旅行者の集客を増やすのに重要なことは何ですか?

北海道のインバウンド集客の成功要因は、県民性の違いも。

大都市の東京や大阪以外で、タイ人旅行者の集客に成功している自治体は「北海道」だと思います。北海道の成功要因は「雪」や「カニ」などの豊富な観光資源が注目されがちですが、北海道民は海外個人旅行客に対してとても寛容です。私の解釈では、封建社会が根強かった本州は「伝統へのこだわり」や「上下関係を重んじる」傾向にあり、封建社会の象徴である城がなく歴史が比較的浅い北海道では「新しいことへの挑戦」や「よそ者に対してフレンドリー」である県民性を感じます。北海道の観光地では、 英語, 中国語, 韓国語, ロシア語, タイ語, インドネシア語 など表記の多言語化が進んでいます。大抵のタイの個人客は英語が理解できるがタイ語での表記に北海道民の心遣いを感じます。具体的な例として、北海道のキロロリゾートは17ヶ国からなる接客スタッフを採用し、言語対応だけでなく、積極的にインバウンド客を集客したいという姿勢が顕著に現れています。

補足:ビジネス誌「プレジデント」によれば、北海道の開拓が本格的に始まったのは明治以降で入植者は本州の祖先との繋がりが薄くなったのも、北海道の県民性の違いは歴史的な背景とも考えられます。

補足:キロロリゾートのFacebook投稿によれば、17ヶ国は「 日本, イギリス, アメリカ, 南アフリカ, オーストラリア, デンマーク, ポルトガル, ニュージーランド, 韓国, 中国, 香港, 台湾, タイ, スリランカ, ポーランド, ネパール, リトアニア 」を指す。

高山市は白川郷の未開拓ニーズを満たす。

もちろん、本州でもタイ人観光客にとって人気の地域はあります。例えば、人気観光地の白川郷へ行く旅行客が宿泊することが多い高山市も魅力的です。白川郷は宿泊施設が少なく、高山市に泊まる旅行者が多いです。高山市では飛騨牛が有名で食事処も充実していて、買い物する場所も多い。白川郷の「風景」は人を引きつけるが旅先での買い物や食事ニーズを満たす必要があります。もし近場に有名観光地があれば、そこで満たされていないニーズを狙うのも地方への集客を上げるのに効果的だと思います。

タイ人観光客の集客には利便性の向上や地方の「創造力」が不可欠。

以前、地方の果樹園の視察ツアーに参加したことがあります。そこでの問題点は果樹園へのバスは1日に2回しか運行されていないことでした。果樹園がどんなに素晴らしくてもバスを逃すリスクは高すぎます。地方への集客に利便性の向上は不可欠です。「 利便性 」が高い地域は、タイ人観光客の集客力は高いです。例えば、大阪の場合、「 神戸 」, 「 姫路 」, 「京都 」。東京の場合、「 横浜 」, 「 箱根 」, 「 河口湖 」。利便性が良くない地方はタイ人観光客は減るのは当然で、集客を少しでも増やすには既存の観光地を宣伝することに加え、新しい施設やサービスで他の地域との差別化が重要です。人気観光地になるための魔法はないと感じています。

フジテレビ「報道2001」で、Tanongさんが参加した姫路の視察ツアーの様子が取材されました。Tanongさんの目線には姫路はどのように映ったのでしょうか?取材動画はこちらから視聴できます。

インタビューの感想として、10年前に始めた趣味のブログが今ではこんなに人気になったのは単にラッキーだと語るTanongさんの謙虚な姿勢が印象的でした。ブログを通じて日本を発信するだけでなく、地方自治体の関係者と深く関係を構築し、「地方創生」を断片的でなく包括的にサポートしていきたいという強い意気込みを感じました。

弊社では、Tanongさんのような影響力が強いインフルエンサーと協力し、外国人旅行者の目線でインバウンドの改善点を洗い出し、海外であまり認知されていない日本の商品や観光地を正直な口コミサービス 「 All Asia KOL 」 で情報発信をサポートしております。サービス内容は、こちらを参照。

インバウンド市場についての調査やプロモーションに興味がございましたら、以下のお問い合わせフォームより気軽にご連絡いただけますと幸いです。

(以下、弊社正面玄関で撮ったTanongさんとの写真)

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