Koyasan Express

【訪日客同行調査】シンガポール人観光客の高野山宿坊体験に完全密着!【第1章】旅前の情報収集を徹底解析

今回は、訪日回数が8回以上を超え、日本が大好きなシンガポール人訪日客、Aida Liu さん(あだ名)の和歌山県の有名観光地「高野山」への旅行に密着取材を敢行しました。以前に取材したスウェーデン人の神戸旅行フランス人の京都旅行での旅中調査に比べ、今回は訪日客の旅前から旅後の感想まで包括的に行動分析を実施しております。

シンガポール人訪日客の「典型的な旅程ではなく、ニッチな体験がしたい」というニーズに対して、弊社スタッフが体験型旅程を重視する西洋系トラベラーに大人気の「高野山」を勧め、2泊3日の旅行に徹底密着取材を行いました。

今回は弊社スタッフが旅程作成には一切関与せず、旅前の情報収集段階から旅中での出来事、そして 旅後の感想まで4パートに分けて長編レポートをお届けします。第一回の今回は旅前の情報収集に対してヒアリングを行いました。

日本政府観光局(JNTO)が発行する訪日旅行データハンドブック2016(世界20市場)によれば、シンガポールからの訪日客の65.3%は訪日リピーターで東南アジアの中で最も多く、日本国内の再訪先もゴールデンルート以外の地方へ周遊するニーズが多い傾向にあります。従って、今後増加が予想される東南アジアからの訪日再訪者による「地方」ニーズはシンガポール人客の地方観光地開拓の行動分析で先読みすることができるかもしれません。

補足:以前に配信した旅程事例集として、弊社が手配したカナダからの訪日個人客の「高野山での宿坊」について言及しております。

桜の時期には必ず訪日するシンガポール人観光客、 Aida Liu (アイーダ・リュウ)さん

Aida Liu さんは中国の湖北省武漢市出身のシンガポール人女性。年齢は28歳。両親の仕事の都合で、6歳の時にシンガポールに移住し、シンガポール人に帰化。幼少期から日本のエンターテイメント番組をよく観て育ち、空前の人気を誇ったロックバンド、「 X JAPAN 」の虜になり、香港で開催されたコンサートに行った経験も。やがて、日本文化に興味を持つようになり、オーストラリアで大学留学中に日本語を選択科目として勉強し始め、シンガポールに帰国後も独学で日本語を特訓し、2016年には日本語能力試験の1級を取得。母国語は中国語と英語。日本語はビジネスレベル。

現在、欧米系証券のシンガポール支店で働く傍ら、休暇には格安航空券を購入し日本旅行を楽しむ。以前に 北海道, 東京, 大阪, 京都, 沖縄 に渡航経験があり、桜の時期には毎年訪日している。今回は、「過去に行ったことがない場所でオススメを教えて欲しい」ということで、弊社スタッフが「高野山の宿坊体験」を勧めた。

質問項目

  • Q1.  どの情報源をもとに旅程を立てましたか?
  • Q2. 旅程を立てる過程で困ったことは何ですか?
  • Q3. どのように宿泊先を予約しましたか?
  • Q4. 旅前に食事処や買い物場所を調べましたか?
  • Q5. 弊社スタッフが旅先を推薦しなければ、どのように旅先を決めますか?

Q1. どの情報源をもとに旅程を立てましたか?

最初に、Google検索で「高野山」について調べ、山々に囲まれた高地にある寺院に僧侶だけだなく日本国内の旅行者も巡礼( “Pilgrimage” )に訪れる「スピリチュアル」な場所で、日本の仏教文化が色濃く残る観光地という印象を持ちました。「高野山」について友人に聞いたところ、シンガポール人の友人は聞いたことが全く無かったが、日本人の友人数人から「一度は行くべきだ」と勧められ、「高野山」への旅行意欲を後押ししました。

情報収集の最初の段階で、「高野山は何が有名なのか」を調べるために、以下の3つのサイトを主に見ました。

  • 日本各地の観光地情報を英語で発信しているサイト、Japan-guide.com
  • 世界各地の観光情報を載せたガイドブックとして有名な、Lonely Planet
  • 和歌山県観光連盟が運営する観光情報サイトの英語版、VisitWakayama.jp

訪日観光情報特化の Japan-guide.com は調べやすく、移動情報は網羅

Japan-guide.comの口コミ評価(2016年1月13日現在)よれば、「高野山」は大阪からの小旅行先として「京都」の次に人気でした。そして、「高野山」のページには、「高野山」の歴史が軽く説明されており、「宿坊」や「奥の院」などの観光名所がランキング形式で紹介されているので、オススメの観光スポットが分かりやすかったです。

Japan-guide.comの1番良い点は、大阪から高野山までの行き方を詳細に紹介していることです。行き方」のページは、それぞれの行き方で時間や料金を表示し、用途に応じてどの割引パス(訪日外国人向けの特別価格を記載)を買えば良いのか分かりやすく説明されています。

高野山・世界遺産きっぷ」は往復2,860円で最も安いパスだが、2日間有効で日をまたいで使用することは不可なため、今回の2泊3日の旅には不向きだと分かりました。Japan-guide.comによれば、高野山での2泊3日以上の旅には、日をまたいで利用が可能な2日間有効の「 KANSAI THRU PASS 」(往復4,000円)が最適だと勧めていたので、このパスを購入することにしました。

ガイドブックで有名な Lonely Planet のオンライン・コンテンツは情報量に欠ける

Lonely Planet も高野山に関する観光スポットの情報が載っていましたが、概要しか載っておらず、情報量も乏しかったです。Japan-guide.comに比べて、行き方や料金の情報がなく、旅程を作るに不向きだと感じました。

和歌山県のオフィシャル観光情報サイト は視覚的に「高野山」の魅力を伝える

和歌山県観光連盟が運営するオフィシャル観光情報サイトの英語版「VisitWakayama.jp」は綺麗な写真が多く、視覚的に高野山に行きたくなりました。主な観光スポットの紹介が簡潔にまとめられていて、翻訳されている英語にも不自然な表現はありませんでした。

Q2. 旅程を立てる過程で困ったことは何ですか?

50カ所以上の宿坊先を1軒ずつ空室確認と値段比較を行う

「高野山」の有名観光スポットや大阪からの行き方は簡単に分かりましたが、旅程を立てる上で苦労したのは「宿泊場所やレストランの予約」「仏教体験の詳細情報の入手」。旅程の詳細を詰めていくのが1番大変でした。

「高野山」は 「宿坊」, 「精進料理」, 「寺院巡り」 が有名だということはわかりましたが、具体的な旅程を立てるのに最適なまとめサイトがなく、高野山で宿坊を営業している50カ所以上ある寺院を1つずつ見ていくうちに旅行を諦めそうになりました。

仏教体験の詳細情報はまとめサイトがなく、様々なサイトに点在

有名観光スポットを巡る以外に「どの寺院でどのような仏教体験ができるのか」という情報がまとまっているサイトが少なく、1番役に立ったサイトは高野山にある唯一のゲストハウス「kokuu」の「高野山の楽しみ方」でした。朝の勤行( “Morning Ceremony” ), 巡礼( “Pilgrimage Routes” ), 瞑想( “Meditation” ), 写経( “Calligraphy” ), 授戒( “Jukai” ) など、簡潔に説明されており、貼り付けられている外部リンク(主に「金剛峯寺」の仏教体験メニュー)に飛ぶことができて、「どの寺院で何ができるのか」より明確になりました。

他にも、Japan-guide.comに載っている「大師教会」の紹介サイトには、予約なしで「授戒」と「写経」が楽しめると書いてあったので、大師教会にとりあえず行けば何もできずに困ることはないことが分かり、安心しました。

高野山宿坊協会の英語版サイトには「高野山」のエリアマップがダウンロードでき、有名な観光スポット, 寺院, バス停 などの情報がマップ上に載っているので、視覚的に「どこに何があるのか」分かるので旅程をまとめるのに適しています。「高野山」のエリアマップを印刷し、行きたい場所や宿泊場所を記載して旅中でも使いました。

以下、Aida Liu さんが実際に利用したマップ

Koyasan Area Map

Q3. どのように宿泊先を予約しましたか?

ホテルはBooking.com、民泊はAirbnb。日系OTAの「じゃらん」と「楽天トラベル」の利用はまれ。

まずは Booking.com で宿坊先を検索しましたが、成人の日(2016年1月9日)とも重なる3連休だったせいか、空室が残っている宿坊先は2カ所だけで、しかも料金は1人あたり1万4,000円くらいでとても高かったです。

2泊3日のうち、1泊だけでも「宿坊」を経験したかったが宿泊費が高かったため、Airbnb で民泊も検索しました。しかし、高野山の麓へ降った橋本駅しか民泊できる場所はなく、立地が悪かったため民泊は諦めました。

あまり利用しない日系OTAの「じゃらん」や「楽天トラベル」も検索したが、Booking.comと同様、検索結果は2カ所だけでした。

直接予約の煩わしさを高野山宿坊協会が解消。訪日客が決めた宿泊予算に合った宿坊先を協会側が提案。

Google検索で宿坊先を探していると、高野山宿坊協会のサイトで宿坊リストを発見しました。ただ、50以上の寺院が掲載されており、どの寺院がオススメなのか全く分かりませんでした。そこで、Tripadvisorの口コミ評価を参考し、評価が最も高かった「恵光院」に着目したが、残念ながら正月休みで休業中でした。

宿坊先を1軒ずつ探すのは労力がかかる上、「手頃な価格帯で泊まれる寺院」を選ぶのが大変でした。時期的にも正月休みに入っている寺院もありましたし、大阪や東京では1泊3,000円くらいのホステルで泊まることが多かったので、1泊1万円を超える宿泊代は高いと感じました。「宿坊」という稀な宿泊形態なので通常よりも多めに払っても良いが、できるだけ価格を抑えて泊まりたかったです。

途方に暮れながら、読むのに慣れていない日本語サイトも拝見すると、高野山宿坊協会のサイトを通じて宿坊先を予約するフォームを発見しました。日本語版の「宿坊のご予約」と同様のページが英語版でもないか探していると、宿坊リストに「Reservation」というボタンがあり、そこをクリックすると英語版の予約サイトにたどりつけました。日本語サイトの方が英語サイトよりも使いやすそうに感じました。

そのサイトを使う利点は、宿泊費を自ら決めることができ、高野山宿坊協会が任意で決めた宿坊先に安く泊まれることです。最安値の1泊9,720円コースを選びました。予約フォームを記入してから24時間以内にメールで返答があり、宿坊先はTripadvisorの口コミ評価で3位の「清浄心院」に決まりました。 結局、最初の1泊目は宿坊を体験し、2泊目は高野山で唯一のゲストハウスで最安値のプラン「Mountain Capsule」を選びました。

補足:以前に配信した Priceline Group の決算書分析記事で紹介した Express Deals® の半不透明な宿泊プランは高野山宿坊協会が運営する予約サイトに似ています。

Q4. 旅前に食事処や買い物場所を調べましたか?

食事処や買い物場所はTripadvisorを参考。旅中でも決められるので、宿泊先予約よりは優先度が低い。

旅程を作成している過程で、高野山では「精進料理」が有名だと知り、旅行初日の昼食に無量光院の精進料理を高野山宿坊協会のサイトで予約しました。Tripadvisorのランキングも参考にしました。宿泊先の予約に時間がかかってしまったので、食事は旅中で決めることにしました。「高野山」のエリアマップにオススメの食事処が載っていたら便利だと感じました。

買い物に関してはTripadvisorのQ&Aを参考にしましたが、高野山で「何が有名なのか」分かりませんでした。旅程作成のプロセスで、高野山が強く押している商品があるとは感じませんでした。

Q5. 弊社スタッフが旅先を推薦しなければ、どのように旅先を決めますか?

Facebookに投稿されている写真が旅行先の決め手に

日本の「地方」を旅先として決める場合は、景色が綺麗な場所を選びます。日本の景色が載っている幾つかのFacebookページをフォローしています。

Facebookに投稿されている写真を見て、北海道の「青い海」( “Blue Pond” )と長野県の「地獄谷野猿公苑」( “Snow Monkey Park” )は行きたいと思っています。シンガポールのリー・シェンロン首相( “Lee Hsien Loong” )が去年のクリスマス休暇に地獄谷猿公苑に行った際に写真をFacebookに投稿したことから、シンガポール人旅行客が更に増えるかもしれません。

日本のコアなファンは日本の幅広いジャンルのニュースサイトをフォロー

日本が好きなので日本のあらゆるニュースを英字新聞の Japan TodayThe Japan Times の投稿を見ています。これらのニュースサイトから地方の観光地特集やイベント情報を目にすることがあります。Rocket News 24 は日本で起きている「くだらなくて、おもしろい出来事」を英語で発信していて、通常のニュースでは特集されにくいコアな日本情報を入手できます。去年の12月に福袋にまつわる日本の買い物文化が特集されていました。今回、初めて正月休みに訪日したので、いろんな百貨店を歩き渡り、福袋を数個購入しました。

旅前インタビュー調査結果のまとめ

  • 訪日客が渡航先を選ぶ過程でFacebookなどのSNS上に投稿されている観光地の写真が重要である
  • Japan-guide.com は日本各地の観光情報を網羅しており、行き方に関しての記載は詳細である
  • ホテルだとBooking.comで、民泊だとAirbnbで安い宿を探し、なければ日本の「じゃらん」や「楽天トラベル」も参考にする
  • 観光地, 宿泊場所, 食事処 はTripadvisorの口コミを見て判断することもある

以上、旅前の情報収集に関するインタビュー結果をお届けしました。

以下にて、訪日客同行調査シリーズ、高野山編の全章分をおまとめしております。

次週は、スウェーデン人の Nathanael Andrews さんフランス人の Abdelfetah さんの旅中レポートと同様、Aida Liuさんの「高野山」への旅行に密着し、シンガポール人観光客の目線で地方観光地の魅力と課題をお伝えします。

今後も、INBOUND RESEARCH .jp を通じて、インバウンド客のあまり語られることがない「生」の情報をご覧になり、地方自治体や企業がインバウンド客の満足度向上にお役立て頂ければ幸いです。

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