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【訪日客同行調査】シンガポール人観光客の高野山宿坊体験に完全密着!【第2章】訪日ベテラン客が感じる高野山の課題とは

今回は、先週にお届けした旅前の情報収集分析に引き続き、訪日回数が8回以上を超えるシンガポール人訪日客、Aida Liu さん(あだ名)が和歌山県の有名観光地「高野山」で体験した宿坊に密着取材を敢行し、実際に起きた出来事やAidaさんの感想をもとに旅中レポートにまとめました。

以前にお届けした旅程事例集で西洋系トラベラーに「高野山」の宿坊体験は大人気であるとお伝えしました。果たして、東南アジアで最も訪日リピーターが多いシンガポールからの観光客にとって「高野山」はどのように映るのでしょうか?そして、現地でのヒアリングをもとに、アジア圏に比べて訪日頻度が少ない西洋系トラベラーにとって「高野山」が大人気である理由に迫ります。

補足:Aidaさんのプロフィールについては前回の記事を参照ください。

調査前提

  • 調査日時:2017年1月6日〜1月8日(2泊3日)
  • 調査方法:同行インタビュー(場所:高野山)

使い放題で便利な「 KANSAI THRU PASS 」

前回でもお伝えした通り、大阪から高野山までの移動方法として、Aidaさんは日をまたいで利用が可能な2日間有効の「 KANSAI THRU PASS 」を4,000円で購入。このパスを利用すると、関西エリア内でJR以外の電車やバスが使い放題になり利便性が高いのが購入の理由だ。「 KANSAI THRU PASS 」は、大阪から高野山までの移動経路で利用した 南海電車, ケーブルカー, 高野山内の路線バス で利用可能。このパスは、訪日外国人だけでなく、日本人海外居住者や訪日外国人に付き添う日本人も利用可能で、今回の調査で同行した日本人スタッフも利用した。

Kansai Thru Pass

列車の種類が複数あり、困惑するAidaさん

大阪から高野山まで行くのに、まずは新今宮駅から南海高野線に乗り、極楽橋駅に向かった。ここでAidaさんが南海高野線に乗車する際に1番心配だったのは 各停列車, 急行列車, 特急列車 に分かれており、間違えて特急列車に乗ってしまうと特急料金を追加で支払う必要があることだ。Aidaさんが駅員に急行列車に乗れているか確認する場面もあった。同じ目的地に向かうのに行き方が様々あるだけでなく、列車の種類も異なる場合もあり、Aidaさんは理解しにくいようだった。

途中で列車の車両が2分割され、さらに困惑することに

列車が途中の橋本駅で一旦停車すると、列車の前方部と後方部の車両が分かれ、前方部のみ高野山に向かうというアナウンスが入った。Aidaさんは困惑し、駅員に乗っている車両は高野山に向かうかどうか聞く場面があった。駅員によれば、車両を2分割することで山道に引いて行く車両を減らすためだという。列車が橋本駅を出発するのを待っていると、後方部に乗っていたと思われる西洋系の旅行者が同じ車両に入ってきた。旅の初日が平日だったからか、日本人観光客よりも外国人観光客の方が多い印象だった。

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途中から外国人観光客の多さが目立つようになった

橋本駅を出発すると、山道で傾斜が徐々にきつくなり、標高が高くなるにつれ、山の木々や渓谷の綺麗な景色が続くようになった。終点の極楽橋駅に到着すると、ケーブルカーに乗り換え、霊峰高野山の玄関口である高野山駅に向かった。ケーブルカーに向かう乗客者の中には西洋系のバックパッカーが目立った。急勾配を行き来するこのケーブルの先頭部では我先にと写真を撮る人でAidaさんは景色をうまく写真に収められなかった。

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東アジアに比べ、訪日客数が圧倒的に少ない西洋人が高野山を多く訪れている

高野山駅に到着。高野山の中心部に向かうバスに乗り換える途中、高野山の観光案内情報が載ったホワイトボードに私の目が止まった。2016年12月の単月で高野山への旅行者が多い都道府県は、近場の大阪府や兵庫県や人口が多い東京都や神奈川県がランクインしたのに比べ、外国人旅行者に限っては オーストラリア, アメリカ, カナダ がトップ3を占め、遠方からの西洋系トラベラーが多い結果になったようだ。ちなみに、訪日客数で67.8%を占める東アジアからは台湾だけが3位にランクイン。

補足:弊社の個人客向け旅程作成サービス「GUIDEST」の中華圏担当者によれば、台湾人客は大阪からアクセスが良好な観光地を選ぶ傾向があるという。この傾向が台湾人客が高野山への旅行者が東アジアで最も多い理由なのかもしれない。(以前に行ったインタビュー内容は、こちら

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Aidaさん、仏教の経典が気になる

高野山の中心部に到着すると、高野山宿坊協会を通じて予約した「精進料理」を提供している寺院に向かった。境内に入ると、寺院の中の襖で仕切られた部屋に誘導された。Aidaさんが部屋に入るやいなや、目に入ったのは仏教の経典。キリスト教には聖書、イスラム教にはコーランがあるように、仏教も同様の書物があることに驚いていた。シンガポールでは味わうことがない寒さからか、Aidaさんがこたつに入って休んでいると、昼食の準備でお坊さんはこたつを除けて、食事を運び始めた。

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Aidaさん、小皿に分かれた料理の食べ方の説明が必要だと感じる

天ぷら, お吸い物, 柿, 胡麻豆腐, 煮付け, 白飯 など、「精進料理」なので動物性成分を含む食材は使用していないように見えた。お坊さんは恥ずかしげに料理を出すと、説明もなく退室。東南アジアでは小皿に分かれた料理をあまり食べたことがないAidaさんにとっては、「何から食べた方がいいのか」というお作法が知りたかったが説明がなかった。また、きゅうすは用意されているが、湯飲みはなく、Aidaさんが通りかかった住職に聞く場面があった。住職によれば、本院では使い終わった茶碗でお茶を飲むのがお作法だという。

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Aidaさん、「精進料理」は味よりも体験

昼食に食べた「精進料理」の中で、Aidaさんは特に胡麻豆腐に気に入り、初めてこんなに濃厚な豆腐を食べたと満足げだった。1食2,700円と決して安くはないが、Aidaさんは高野山でしか味わえない「体験」なので価格は妥当だと感じていた。Aidaさんが調べた事前情報によれば、標高が高い高野山では山の麓から食材を入手すると輸送費が多くかかり、「精進料理」には山々で採取した新鮮な食材を多く利用している背景もあるので値段が高くても納得できるという。Aidaさんにとっては床が畳の部屋で正座になり食事を摂る日本ならではの雰囲気に満足したと語った。

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「精進料理」はビーガン対応でない可能性も

会計時には、住職に「だし」や「天ぷら粉」には本当に動物性成分を使っていないのかという質問をすると、実は天ぷら粉には少量の卵を使っていると回答。Aidaさんはベジタリアンではないので全然気にならないようだったが、以前に取り上げたAbdelfetahさんのようにビーガンの外国人観光客はこの実情を知りたくはないのではないかと心配になりながら寺院を後にした。

日本語が母国語ではないAidaさん、大師協会で「授戒」の聞き取りに挑戦

次に向かったのは大師協会だ。Japan-guide.comによれば、予約なしに「授戒」と「写経」が受けられるからだ。「授戒」は受けられる時間が限られているので、Aidaさんは「授戒」を選択。500円の入壇料を清算した後、本館から少し離れたろうそくの光だけが灯る暗い部屋へ誘導された。参加者が全員入室すると、戸は閉められ、ストーブが1台あるものの身が引き締まる寒さの中、参加者は全員正座をして、仏の教え(戒)を伝える阿闍梨さまの入室を待った。しばらくすると、阿闍梨さまが入室し、十戒について語りはじめ、参加者全員が復唱をする場面もあった。

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阿闍梨さま、動物の命の尊さを説く

「授戒」でAidaさんが印象的に残った話は、映画「ブタがいた教室」でも話題になった大阪府の小学校で行われた実際の授業を取り上げ、小学生が子豚の「Pちゃん」を数年間飼育した後に「食べるか」「食べないか」の賛否両論が巻き起こったという内容だった。「Pちゃん」の話を例に挙げ、阿闍梨さまは「人間はそもそも動物を口にしなければ良い」のではないかと説き、「十戒」をもとに慈悲の精神を訴えていた。

実例を用いて道徳を教える、という語り方に親近感を覚えた

キリスト教徒であるAidaさんにとって、教会で登壇した牧師が最近の出来事を例に挙げて、聖書の教えを説教する光景に慣れている。日本語が母国語ではないAidaさんは法話を全て理解した訳ではないが、古くからの道徳的哲学で現代の事象を説明する語り方には、キリスト教との親近感を覚えたという。ただ、退出できない真っ暗な部屋に正座で話を聞いたことは初めてで、仏教の「厳しさ」や「神聖さ」を体感できて大満足だと語った。

高野山を深く知るために、現地ガイドを依頼したAidaさん

大師協会の本館に戻ると、Aidaさんが外国人向け観光案内デスクを発見。そこで目にしたチラシでAidaさんが気になったのは、高野山を囲んでいる山々の頂上を歩く女人道コースを現地ガイドと共にハイキングするツアーでした。1人あたり2,000円で3時間のハイキングに英語が話せるガイドをつけて、高野山の歴史にまつわる深い話が聞けるのはお得だとAidaは感じていた。英語でガイドに電話予約ができ、翌日の9時に観光案内所の前に集合になった。

バス運転手、英語での問いかけが外国人馴れしている

大師協会を後にし、バスで宿坊先である「清浄心院」に向かった。バスから降り、Google Map を見ながら宿坊先を探していると、バスの運転手が英語で「どこに向かっているのですか?」と聞いてきた。Aidaさんは突然の英語での問いかけに驚くと共に嬉しそうだった。Aidaさんは高野山で働いている人は外国人馴れしている印象を抱いた。

宿坊がインバウド集客に成功した要因にはツアー会社の積極的な販売

「清浄心院」に到着し、宿坊客を主に担当する受付係がパスポート確認を終えると、すぐに宿泊部屋に案内された。その受付係によれば、「清浄心院」に宿泊する客の80%はインバウンドで、高野山がインバウンドの集客に成功した要因は阪神交通社などのツアー会社が積極的に高野山を観光地開拓をした背景があり、海外での口コミが高野山の人気をさらに押し上げられたそうだ。

補足:Aidaさんが宿泊した部屋は「清浄心院」のホームページに載っている「ふすま区切り」を参照。

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言語面でインバウンド対策が隅々まで行き渡っている

院内には英語表記が多く、インバウンド向け対応が隅々までなされている印象だ。西洋人は共同でお風呂に入ることを嫌がる傾向があるので、浴室は共同ではなく、浴室の扉を中から鍵がかけられるようになっている。お風呂の入り方に関するエチケットも英語表記で明確に書かれている。

それぞれの寺院でビーガンへの意識が異なる

夕食は指定された時間にふすまの大部屋に案内され、畳の床に正座をし、小部屋ではないので静かに「精進料理」を食べた。両隣の客はどちらも西洋人だった。案内係によれば、この寺院では動物性食品を一切使わない厳格なビーガン対応ができているという。昼食で食べた「精進料理」は卵が含まれていたので、ビーガン対応において各寺院で対応や意識が異なるという印象を私は抱いた。食事が終わると、各自で部屋に戻り、Aidaさんは外に出ることなく、就寝についた。

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Aidaさん以外の宿坊客は全て西洋人

翌朝、朝のお勤めが始まる6時30分の10分前に鐘が鳴り、宿坊客はお坊さんがお経を読みあげている部屋に案内された。宿坊客を見えるとAidaさん以外は西洋系トラベラーばかりでした。お経は30分ほどで終了し、終わりの挨拶は英語で簡単に行われた。そして、宿坊客は夕食と同じ部屋に案内され、朝食として「精進料理」を食べ、Aidaさんは荷物をまとめるとすぐにチェックアウトをしてハイキングの集合場所に向かった。

Aidaさん、寺院内を見るだけでなく、もっと日本の仏教文化を知りたかった

宿坊体験に関して、Aidaさんは英語表記が多いのはいいが、宿坊先のスタッフも外国人馴れしていて、宿坊が商業化しすぎている印象を持った。Aidaさんは寺院で仏教体験を楽しみにしていたが、朝のお勤めと食事の時間以外では院内の僧侶と会う時間はなく、宿坊は「体験」よりも「宿」の意味合いが強かったのは残念に感じていた。Aidaさんは朝のお勤めを行う理由やその歴史的背景などの深い説明が欲しく、視覚的情報だけでなく、知的情報を得たかったようだった。今度、Aidaさんが宿坊する際には、口コミなどを参考にし、体験メニューが多い寺院を選ぶそうだ。

Aidaさんの高野山旅行に同行した調査員の感想

  • 高野山への訪問客は西洋系トラベラーが多く、宿坊客のほとんどを占める
  • Aidaさんは「精進料理」を「食事」よりも「体験」と捉え、高い価格帯でも妥当だと感じた
  • 高野山内は英語表記も多く、外国人馴れした日本人スタッフが多い
  • 「宿坊」などの特殊な宿泊形態は「宿」だけでなく「体験」が期待されている
  • インバウンドの「高野山を深く知りたい」というニーズに対して宿坊先である供給側が対応できていないことが多い

以上、高野山の旅中レポートの前編をお送りしました。次回はAidaさんの高野山旅行2日目での出来事をお届けします。

以下にて、訪日客同行調査シリーズ、高野山編の全章分をおまとめしております。

果たして、Aidaさんの「高野山を深く知りたい」というニーズをハイキングに同行したガイドは満たせたのでしょうか?

訪日客同行調査は地方自治体がインバウンド集客に成功するためのヒントが得られるかもしれません。通常のアンケート調査に比べ、数人の訪日客に同行して思考回路を深く把握することで、どのようなインバウンド施策が訪日客の満足度を向上させるのかより明確にわかるようになります。

弊社はインバウンドに関して様々な調査メニューを提供しております。インバウンド市場についての調査に興味がございましたら、以下のお問い合わせフォームより気軽にご連絡いただけますと幸いです。

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