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【訪日客同行調査】シンガポール人観光客の高野山宿坊体験に完全密着!【最終章】ゲストハウス宿泊者に聞いた、高野山が西洋人にウケる理由

2017年1月16日から3週間に渡ってお届けしている高野山の訪日客同行調査シリーズの最終章。今回は、数々の賞を受賞した有名ゲストハウスでAidaさんが出会った宿泊客との会話から分かる、高野山が西洋人にウケる理由を解説します。そして、Aidaさんに旅後の感想と次に訪れたい観光地についてヒアリングも行いました。

数々の賞に輝いたゲストハウス、旅程の提案に工夫

Aidaさんは1泊目には宿坊を体験し、2泊目は安さを基準にゲストハウスを選択。Aidaさんは高野山の安宿を探したが、高野山の中心部には宿坊しかなく、探すことができた唯一の安宿はバスで10分ほど離れたゲストハウスだった。Aidaさんがゲストハウスに入ると、海外と感じさせるほど共同スペースでは欧州からの旅行者同士で英語が飛び交っていた。しばらくすると、日本人スタッフによるAidaさんのチェックインが始まった。宿泊料金の支払いやゲストハウス内の施設の説明だけでなく、高野山内の主要観光地やイベント情報などを地図を用いて丁寧に説明していた。海外旅行者向けの地図には手書きで英語の説明を加えるなど、旅程へのアドバイスも積極的だ。Aidaさんは毎朝6時に始まる弘法大師御廟の朝のお勤めをゲストハウスのスタッフから勧められ、早起きをして行くことに決めた。

日本でありながら海外の雰囲気を感じさせる料理メニュー

ゲストハウスでは料理も提供しているが、近隣のトンカツ屋をお勧めるなど、周辺情報も多く提供しており、旅行者と地元民との触れ合いを大切にしている印象だ。寒くて外出したくなかったAidaさんはゲストハウスのメニューからインド料理のバターチキンをチョイス。メニューは全て英語で記載されており、他にはタイ料理のグリーンカレーなど、海外旅行者を意識した料理が並ぶ。アルコール類は、お酒やウィスキーが多く、日本産を意識している印象だった。

Mt Koya Map

教会に見慣れた西洋人にとって、日本の寺院は新鮮味がある

夕食中に、ゲストハウスで働くイタリア人のスタッフと話す機会があった。彼はゲストハウスで様々な旅行者と触れ合いながら働くのが好きで、西洋人の観光客が多い高野山に移り住んできた。彼によれば、教会に見慣れている西洋人にとって日本の寺院は新鮮味があるようだ。しかも、そんな寺院で泊まることができるのは格別な体験のようだ。

ドイツ人宿泊者によれば、ガイドブックを読んでいる西洋系トラベラーで「高野山」を知らない人はいない

Aidaさんの目の前に座ってきたドイツ人の宿泊者はドイツの大学を休学し、ワーキングホリデーで来日した。福岡で日本語の勉強を終え、残りの期間は日本中を旅行し、ドイツに帰国予定だ。その旅行先の1つに高野山を選んだ。彼は Lonely Planet などのガイドブックを参考にし旅程を立て、高野山の奥の院は日本の観光地ランキングで上位にランクインしており、気になっていたようだ。彼は自然が好きで、翌日はハイキングをする旅程だった。

補足:Lonely Planet の最新版(2015年8月発行)によれば、日本の観光トップ25( Japan’s Top 25 )で高野山の奥の院( “Oku-no-in at Koya-san ” )は第14位に輝く。紹介文によれば、ケーブルカーで高野山に登る様は別世界に行くようなもので、奥の院の広大な墓地は大杉に囲まれ、仏像も自然物に思ってしまうほど、スピリチュアルな場所との記述がある。ちなみに、第1位は京都の寺院だ。

仏教発祥のインドとの繋がりなど、他国との関係性に着目するドイツ人宿泊者

このドイツ人宿泊者の母親はインド東海岸にある元フランス領のポンディシェリーで仏教の書物でも使用されたサンスクリット(Sanskrit)の研究や翻訳を仕事にしていた関係で、仏教がインドから中国経由でどのように日本に影響を与えたのか興味があったという。彼によれば、日本の仏教用語の多くはサンスクリットを漢字の音読みによるもので、仏教発祥のインドのルーツを感じさせたようだ。

ソーセージで有名なドイツ、10人に1人がビーガンというヨーロッパで最も菜食主義な国だ。

彼はビーガンで、ゲストハウスのスタッフとの会話のやりとりで、翌日の朝食には卵やパンは使用しても可能かと、確認があった。ビーガンは動物性食品を避ける極度のベジタリアンだが、卵やパンを抜いてしまうと、サラダとフルーツのみになってしまうので、彼は仕方なく卵やパンを食べることにした。彼によると、ドイツ国民の10%ほどはベジタリアンでヨーロッパで特に動物愛護の意識は高い国だという。日本では厳格なビーガンの生活を送るのは難しいが、肉は避けるようにしているという。西洋人が高野山を選ぶ理由には、生き物すべてを敬うという「精進料理」に秘められた仏教の精神がビーガンが多い西洋人に共感を与えているとも考えられる。

補足:小売業の市場調査会社でロンドンに本社を置くMintelによれば、ドイツがヨーロッパ全体のビーガン人口の36%を占め、最も多い国だ。次いで、英国(21%), フランス(7%), イタリア(4%) の順だ。ドイツでは飲食品に関する新商品の10%はビーガン向け商品で、6%を占めるベジタリアン向け商品よりも多いことから、ドイツ人がより厳格なベジタリアンになっていることが推測される。ヨーロッパ全体では9%はベジタリアンで、5%はビーガンという統計もある。

ロンドンの滞在経験を持つゲストハウスの創業者も旅行者との会話を楽しむ

夕食が終わり、Aidaさんがロビーでゆっくりしていると、ゲストハウスの創業者である高井さんが会話に参加してきた。彼は先祖代々からお坊さんの家族で育ち、兄がお坊さんを継いだので、弟として世襲問題は心配することなく、ゲストハウス運営ができるという。高井さんはロンドンでの滞在経験があり、海外旅行客がすでに多かった高野山で生まれ故郷の魅力を宿泊者とのふれあいを通して発信してきたいと思い、このゲストハウスを始めたそうだ。高井さんはゲストハウスの見回りに来ながら、宿泊者との会話も楽しんでいた。

補足:日本中に、「ほしい未来は、つくる」人を増やすことをミッションに掲げた非営利のウェブマガジン、greenz.jp でも高井さんがゲストハウスを創業した経緯が詳細に記載されています。参照リンクはこちらから。

kokuu

1部屋は3,500円から。1万円以上する宿坊に比べて安い。

Aidaさんが選んだのは1泊3,500円のカプセル型の部屋。Aidaさんによれば、カプセル内の壁は頑丈で隣の宿泊者からの音は聞こえず、布団も柔らかくて寝心地がよかったそうだ。トイレ・シャワーは共用だが、清掃が行き渡っており、きれいで特に気になることはないとのこと。

多くの有名戦国武将が奥の院の墓地に眠り、極楽往生を待っている

翌朝、Aidaさんは朝5時頃に起床し、弘法大師御廟の朝のお勤めを拝見しに向かった。弘法大師御廟は、今でも生きているとされている真言宗開祖の弘法大師空海が眠っている場所だ。弘法大師御廟に辿りつく途中には多くの墓石が並んでおり、織田信長, 豊臣秀吉, 武田信玄 などの名だたる戦国武将の墓などが点在する。Aidaさんが旅前に調べた情報によれば、弘法大師の下で眠れば極楽往生できるとの思いから、多くの墓が奥の院に立てられたようだ。

Okunoin

戦国武将を知らないAidaさんはユニークな「企業墓」が気になった

Aidaさんは日本の歴史を勉強したことがないため、視覚的によりインパクトがある「企業墓」の方が気になった。日産自動車, ヤクルト, 福助, 新明和工業, 日本しろあり対策協会 がそれぞれの企業イメージをもとに慰霊碑を立てており、Aidaさんはそちらの方に興味深々だった。Aidaさんの興味を最も引いたのはUCC上島珈琲のコーヒーカップを模した慰霊碑だった。

UCC

燈籠堂の幻想的な雰囲気に感激するAidaさん

弘法大師御廟に到着し、朝のお勤めを見ることができた。前日に宿坊先で経験したのよりも多くのお坊さんがお経を唱えていたが、Aidaさんには特に大きな感動があった訳ではなかったようだ。朝のお勤めが終わると、弘法大師御廟からすぐ近くの燈籠堂に入った。Aidaさんは燈籠で埋めつくされた幻想的な雰囲気に感動していて、今までこんなに多くの燈籠を1度に見たことがないと語った。

運行頻度が少ない地方の路線バス、Google Map に載っておらず不便

翌日の早い時間帯にシンガポールへ帰国するAidaさんは、ゲストハウスをチェックアウトし、行きと同じルートで大阪へ戻ることにした。Google Map で高野山駅に向かうバスを調べると、バスの発着時刻は載っていなかった。そして、Aidaさんがバス停に到着した時には、ちょうどバスが出発してしまった。次のバスの到着時刻はAidaさんはバス停の時刻表で確認をした。雨が降り始めて寒さが増す中、Aidaさんはバス停で30分後に来る次のバスを待って、高野山駅行きのバスにようやく乗車できた。

Koya Bus Stop

シンガポールには山がなく、山々から立ち上がる霧を珍しそうに写真に収めるAidaさん

高野山の麓に降りるケーブルカーや電車の中から、Aidaさんは雨が降った後に山から立ち上がる霧を写真に収めようとしていた。Aidaさんによれば、高温多湿でスコールが多いシンガポールだが、狭い国土には山がなく、山から霧が立ち上がる光景を見ることは珍しいという。帰りの電車でも西洋人と見られる旅行者が多く、大阪に近くに連れて日本人の乗客が多くなった。そして、Aidaさんは大阪の新今宮駅に着くと、残り半日を大阪で観光して、翌日にシンガポールへ帰国した。

補足:シンガポールで最も標高が高い場所は Bukit Timah Hill と呼ばれる丘で、標高は164 mだ。

Mt Koya Fog

旅後の感想:奥の院が高野山での1番の思い出。次に訪れたい観光地は、同じ和歌山県にある那智の滝。

シンガポール帰国後に、Aidaさんに高野山旅行の感想を聞いてみた。最も良かった思い出として、Aidaさんは奥の院を挙げ、参道の周りを囲う大杉や墓石の神聖さや燈籠堂の幻想的な雰囲気が印象的だったという。ちなみに、奥の院は Lonely Planet で高野山の観光地ランキングで1位に輝いており、Aidaさんの回答は Lonely Planet の順位を裏付ける結果になった。

そして、次に訪れたい日本の観光地として、和歌山県の那智の滝を挙げた。理由は、前回の記事で取り上げた通訳案内士から勧められ知ったこと、そして那智の滝をバックにして撮った青岸渡寺の三重の塔の綺麗な写真をFacebookの投稿で見たからだという。

以上、4章に渡ってお届けしたシンガポール人の高野山宿坊体験レポートをお送りしました。

以下にて、訪日客同行調査シリーズ、高野山編の全章分をおまとめしております。

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