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【現場暴露シリーズ】大手ドラッグストア各社で化粧品の販売経験を持つ中国人留学生が語った、ドラッグストアでの中国人消費現場の実態

今回は、某大手化粧品メーカーの派遣社員として、大手ドラッグストア各社でインバウンドに対する接客対応や販売促進の経験を持つ中国人留学生の馮哲雅(仮名)さんにインタビューをいたしました。

インバウンドの買い物消費が集中するドラッグストアには、大手化粧品メーカーから派遣されるバイリンガル・スタッフが訪日外国人を接客し、自社商品の販売を促進する構図になっています。中国人観光客の消費現場をドラッグストアの店内で見続けてきた中国人留学生が、ドラッグストアで働くようになった経緯から中国人観光客に対する販売ノウハウまで、自らの経験を語っていただきました。

中国人訪日客数が増え続ける一方、中国経済の減速と関税強化の影響からか、中国人訪日客の1人あたりの買い物消費額は減少傾向にあります。そのため、単価が低い日用品や食品を販売するドラッグストアには今後もインバウンドの消費が集中すると考えられます。

果たして、ドラッグストアで買い物をする中国人観光客は何を求めているのでしょうか?

インタビュー項目

  • Q1. どのような経緯で日本留学を決めたのですか?
  • Q2. 初めて日本に来て驚いたことは何ですか?
  • Q3. どのようにしてアルバイトを探しましたか?
  • Q4. どのような経緯でドラッグストアで働くようになったのですか?
  • Q5. ドラッグストアの各店舗で商品やサービスの内容に違いはありますか?
  • Q6. どのように中国人訪日客に対して日本の化粧品を販売しましたか?
  • Q7. 仕事を始めた当初と比べ、ドラッグストアの客層は変わりましたか?
  • Q8. 中国人訪日客に人気な商品は何ですか?

Q1. どのような経緯で日本留学を決めたのですか?

私は北京の大学で日本語とビジネスが学べるダブル専攻コースに入学しました。北京で大学生活を2年間送った後に、休学することなく、日本で2年間の留学経験を得られるため、このコースを選びました。初めて来日したのは2015年です。

Q2. 初めて日本に来て驚いたことは何ですか?

日本と中国の文化の違いに驚きました。中国では茶道や漢字などの日本文化は中国から来ていると学んだので、日本の現代文化は中国と似ていると思っていましたが、感覚的に大きな文化の違いを感じました。例えば、日本ならではの礼儀です。初対面の方に対して、中国では握手だけなのに対し、日本では深々とお辞儀をする姿を見て驚きました。来日時は日本語が下手で、留学先が大阪だったため、関西弁の理解にも苦労しました。

Q3. どのようにしてアルバイトを探しましたか?

金銭的に余裕があったのですが、日本での仕事を通じて、日本人の暮らしぶりを経験したかったので、アルバイトを探しました。まずは、街中を歩きながらアルバイト募集の広告を見て、気になった仕事は全て応募しました。来日当初は言語面に不安があったため、居酒屋で料理や皿洗いなどの裏方の仕事をしました。30種類以上ある調味料の名前の暗記や料理の作り方をマスターするのに必死で、このアルバイトは7ヶ月ほどしか続きませんでした。学校では、留学生が全くいないクラスで、関西弁を話す教授の授業スピードについていくのが大変で、最初の学期で単位を落としてしまいました。

Q4. どのような経緯でドラッグストアで働くようになったのですか?

留学生のアルバイト探しは、街中のアルバイト募集の張り紙, タウンワーク, 友人からの紹介 が一般的だと馮哲雅さんは語る

街中のアルバイト募集の広告からの応募の他にも、留学生のアルバイト探しは日本人学生も多く利用するタウンワークも人気です。タウンワークからコクミンドラッグのアルバイト店員の仕事を見つけ、接客から在庫管理まで様々な業務を経験しました。そして、友人からの紹介で、派遣社員として、“通訳” の仕事もしました。派遣先はドラッグストアが多く、訪問販売をする某大手化粧品メーカーの日本人販売員の “通訳” の仕事をしました。

ドラッグストアでの “通訳” の仕事は、実際には販売員のような仕事だった

表向きは日本人販売員の “通訳” ですが、マツモトキヨシ, サンドラッグ, スギドラッグ, ココカラファイン, ツルハドラッグ などのドラッグストアチェーンに赴き、実質的には訪日外国人に対する “販売” が求められる仕事でした。販売数量で時給が変動することはないのですが、日本人販売員からは販売目標を達成することが期待されていました。

Q5. ドラッグストアの各店舗で商品やサービスの内容に違いはありますか?

ドラッグストアの商品価格やサービス内容は店舗ごとで大差はないが、商品価格の差に敏感な中国人客が多い

同じドラッグストアチェーンでも各店舗で商品価格が多少違ったり、店舗の大きさで品揃えが変わったりするくらいで、ドラッグストアの商品内容で大きな違いを感じませんでした。ただ、中国人客はこの商品価格の差に敏感で、各店舗で商品価格を写真で撮りながら、最も安く売る店舗を探すことも稀ではありません。私も、どの店舗が商品を最も安く売っているのか聞かれることがよくあります。

マツモトキヨシの中国人向けプロモーションは効果絶大

数あるドラッグストアチェーンの中で、マツモトキヨシは中国人訪日客にとって大人気です。マツモトキヨシは中国人向けサイトを設け、百度(中国版Google), 微博(中国版Facebook), 微博(中国版LINE)など、インターネット広告で積極的に宣伝しています。消費税8%が免税対象になる中国人観光客を対象に、3万円以上の買い物が5%割引になるクーポン(1万円以上、3万円未満の買い物には3%割引になるクーポン)をサイト上で発行しています。そのため、中国人訪日客の間ではマツモトキヨシの認知度が高く、マツモトキヨシが販売する商品が最も安いと信じる中国人客も多いです。

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以上、マツモトキヨシが中国人向け日本旅行情報メディア「東京攻略」の微博サイトを通じて宣伝しているクーポン

人気が少ないドラッグストアの店舗でソーシャルバイヤーの「爆買い」を目撃

他にも、心斎橋や難波の中心地から少し離れた某ドラッグストアチェーンの店舗ではソーシャルバイヤーが同一商品を30個ほど買う光景を目にしました。人通りが多い路面店に比べ、ソーシャルバイヤーは人気が少ない店舗で、あらかじめ決めた商品を大量に安く仕入れていると思います。

Q6. どのように中国人訪日客に対して日本の化粧品を販売しましたか?

日本人販売員の先輩からは、お客様をいくつかのタイプに分けて接客のアプローチを変えるように、指導されました。私なりに、ドラッグストアで買い物する中国人客を3つのタイプに分け、接客や営業の仕方を変えました。

すでに買う商品を決めているお客様には積極的な販売促進を行わない

スマホを見ながら商品を探している中国人客のほとんどはすでに買う商品を決めている方です。特定の商品やブランドを購入することが決まっている方はその商品が売っている場所にご案内し、他の商品を買うことを強要しません。特にブランドを資生堂に絞って、商品を探している客が多く、その場合は、資生堂の接客スタッフにその客の対応をお任せします。

他人用にプレゼントを買うお客様には商機があるが、自分用に比べて他人用は単価が低い傾向

次に、中国にいる家族や友人のためのプレゼントを探してる中国人客です。他人に買うため、商品選びに悩んでいる方も多く、新たな商品をご紹介するチャンスがあります。特に彼女や妻のためにスキンケア商品や化粧品選びに悩んでいる男性客は販売員の営業トークに影響されやすい傾向があります。そして、自分用と他人用の商品を購入する場合は、自分用には値段が高めの商品を買い、他人用には安めの商品を買う傾向があると感じます。そのため、誰のために商品を買うのか聞くのかは、重要です。

自分用の商品選びに悩む客に積極的にアプローチ、メークに慣れていない中国人女性客には丁寧なご説明が重要

最後に、スキンケアや化粧品に興味はあるものの、商品選びに悩んでいる中国人客です。日本人女性と違い、中国人女性はメークをせず、素顔が好きという方が依然として多いです。日本に訪れる中国人客の中には、化粧をする日本人女性の美しさに惹かれ、メークに興味を持った方もいらっしゃいます。私も中国ではメークしたことが一度もなく、日本人販売員から私の化粧に対して厳しい指導がありました。メークに慣れていない中国人女性客に対して肌質をチェックした後、適切なスキンケア商品をお勧めし、丁寧な接客に心がけました。

店先で大声を張って商品を宣伝するのは、中国人客にとって逆効果

日本人販売員の指導のもと、ドラッグストアの店内だけでなく、ドラッグストアの店先で大声を張って商品を宣伝し、客引きをすることもありました。日本人客にとっては有効かも知れないですが、中国人客に対してはその宣伝方法は逆効果だと思っています。大声を出して紹介しないと売れない商品だという印象を中国人客に与えてしまう可能性があるからです。

Q7. 仕事を始めた当初と比べ、ドラッグストアの客層は変わりましたか?

ドラッグストアから中国人の客足が減った

私が通訳の仕事をした期間は1年間ほどで、2017年2月に仕事を辞めました。この1年間で、ドラッグストアに訪れる中国人買い物客は減ったと思います。日本人販売員からも中国人客からの売上が減ったと聞きました。特に、高価格商品の需要が減っているそうです。

中国人客減少の理由には、中国経済の減速も

中国人買い物客の減少は中国経済の減速が影響していると私は思います。特に、沿岸部の大都市圏と内陸部の地方都市との経済格差が広がっていると北京郊外の国営の鉄道会社で会計士として働く私の母から聞いています。資源価格の下落に加え、北京では環境保護に対する意識が高まり、天然資源を輸送する貨物列車の需要が減ったことから、石炭生産に頼っていた太原市などの地方都市経済は低迷しているそうです。

中国の都市部と内陸部に住む人とでは客単価が4倍以上違う

このような中国内の経済格差は、ドラッグストアでの客単価の差にも表れています。上海在住の訪日客には4,000円〜10,000円のスキンケア商品をお勧めすることが多いのですが、中国内陸部からの訪日客には1,000円前後の商品をお勧めするようにしています。訪日目的も、中国内陸部出身の方は観光がメインなのに対し、上海在住の方はショッピングと観光が同じ比重であるように感じます。

最近では、韓国人客が多いため、韓国語が話せる “通訳” スタッフが求められる

最近では、日本人販売員からは韓国語が話せる “通訳” スタッフを求める声を多く耳にします。今年の春節は、ドラッグストアの店内で中国人客よりも韓国人客を多く見かけました。ブランドや知名度を気にする中国人客に対して、韓国人客はブランドへのこだわりが少なく、低価格帯の商品にも興味があるという印象です。

Q8. 中国人訪日客に人気な商品は何ですか?

ブランド名よりも商品名が有名な場合は、同じブランドの新商品へ人気は波及しにくい

ドラッグストアでは、国内4大化粧品メーカー( 資生堂, カネボウ, コーセー, ソフィーナ )の高価格帯の商品や海外の有名化粧品ブランド( シャネル, ディオール, イヴサンローラン, マック 等)はあまり扱っておらず、これらを求める富裕層の中国人観光客には 大丸, 高島屋, 阪急百貨店 などの百貨店に誘導します。そのため、ドラッグストアの店内では国内4大化粧品メーカーの中間価格帯から低価格隊までの商品を買い求める中国人客が多く、その中で資生堂の化粧水、SK-II(中国名は神仙水)が最も人気です。次いで、コーセーの雪肌精が人気なのですが、カネボウとソフィナに関しては中国で知名度がほとんどない状態です。例えば、カネボウは化粧品のKATEや酵素洗顔パウダーのsuisai(スイサイ)など、ブランドよりも商品名の方が知名度が高く、あまり知られていないカネボウの商品に対して中国人観光客はあまり興味を示さないケースがほとんどです。加えて、同じブランドでも、商品名, 価格帯, パッケージ などで、中国と日本で商品戦略が違う場合は、中国人訪日客にとって中国で見慣れている商品との連想がしにくく、日本版の商品を買うのを控えることも少なくありません。

中国人観光客が日本の医薬品を買う理由として、「効能」や「信憑性」が挙げられる

医薬品に関して、年配層には久光製薬のサロンパスが人気で、若年層には吹き出物やニキビに効くライオンのペアが人気です。他にも、小林製薬のサカムケアは塗りやすい液状絆創膏として中国人訪日客の間でも大人気です。子供連れの30代の中国人観光客は子供向けの風邪薬として、池田模範堂のムヒのこどもかぜ顆粒が人気で、味がピーチとイチゴに分かれており、子供にとって風邪薬を飲みやすくしているのも人気の理由だと思います。全般的に、中国の薬よりも日本の薬の方が安心だと信じる客が多いのも、日本の医薬品が中国人観光客にとって人気な理由です。

コンドームのオカモトは中国人男性に大人気、転売目的の「爆買い」も多い

ドラッグストアに訪れる中国人男性客の多くは女性に頼まれた商品を買い求めています。日本人男性と違って、中国人男性はワックスやジェルなどの整髪料を使用せず、男性向け美容商品にもほとんど興味がありません。医薬品に関しても、中国人男性は使い慣れた薬を好む傾向があり、中国人女性に比べて新しい医薬品の効能に信じにくいです。中国人男性客の人気な商品として挙げられるのは、日本製のコンドーム、「オカモトゼロワン0.01mm」くらいです。中国で転売する目的で大量に購入する男性客がいるほどです。

温かい水を好む中国人、保温性が高い水筒が人気

他にも、象印やタイガーの水筒を買い求める中国人観光客を多く目にします。日本人と違って、中国人はレストランで冷たい水を飲む習慣はなく、温かい水を好みます。保温性が高く、持ち運びができる高性能な水筒は中国で大人気です。

以上、ドラッグストア各社で働いた経験を持つ中国人留学生、馮哲雅さんとのインタビュー内容をお届けしました。

INBOUND RESEARCH .jp では、インバウンドの自主調査記事を隔週、配信しております。インバウンド市場についてのプロモーションや調査に興味がございましたら、以下のお問い合わせフォームより気軽にご連絡いただけますと幸いです。

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