HKG Taxi

【現場暴露シリーズ】現役「白タク」ドライバーが明かした、訪日中国人に広まる無許可の「白タク」ガイドの真相。

今回は、訪日ツアーで横行している「白ナンバー問題」を取り上げ、実際に「白タク」で訪日中国人を案内するガイドにインタビュー調査を行いました。ナンバープレートが白地である自家用車で送迎サービスを有料で行うことは、現在、原則として法律で禁じられています。ホテル業界を脅かす「民泊」に続いて、今回はバス・タクシー業界を脅かす存在の「白ナンバー問題」に注目しました。

正規料金では訪日ツアーが売れない、「白バス」が独占する中国人向け訪日団体ツアー

海外の旅行会社に対して当社が旅行を手配する際、バス会社が営業許可を持っていることだけでなく、国土交通省が定める貸切バス運賃の上限額から下限額までの間で手配する必要があり、貸切バスの運賃は距離と時間で決まっている。例えば、小型車が10時間で200kmを走行した場合、貸切バス運賃の下限額は54,500円になります。しかし、当社のバス手配担当者によると、旅行会社が下限運賃で手配したとしても、バス会社が旅行会社に手数料を支払うことが業界の慣習になっており、実質的にバス運賃の相場は下限額よりもはるかに下回っているのが現状のようです。そこで、バス会社各社は 新車の導入, WiFi完備, 経験豊富なドライバー などを売りにして、値崩れに対抗するように動いています。ただ、激安訪日ツアーの間で広まっている「白バス」ともなれば、下限運賃以下での運行はおろか、営業許可すらも持っていないのが現状です。

個人旅行者向け少人数ツアーが増え、「白タク」需要が高まる

当社の中国営業担当者によると、すでにメディアでもよく取り上げられている悪徳免税店ツアーだけでなく、営業許可なしで運行する「白バス」、そして最近では大阪・心斎橋でマンション丸ごと一棟を団体客向けのホテルとして運営している事例もあり、正規料金で一般的な訪日ツアーを中国で販売すると価格競争で負けてしまうといった現状があります。そして、中国から日本に訪れる個人旅行者の増加に伴い、「白タク」を利用した少人数ツアーが中国で人気の旅行商品になっています。最近では、中国人海外旅行客と海外在住の中国人ドライバーをマッチングするアプリも参入し、中国人観光客の間で「白タク」の利用が今後も増えていくと予想されます。

そこで今回は、「集客方法」や「報酬体系」など、「白タク」業界のカラクリを2年以上のドライバー経験がある中国人男性にお聞きしました。

質問項目

  • Q1. どのような経緯でドライバーの仕事を始めたのですか?
  • Q2. どのように中国のお客様を集客するのですか?
  • Q3. どのような中国のお客様がドライバーを依頼するのですか?
  • Q4. どのような報酬体系になっているのでしょうか?
  • Q5. 1ヵ月あたり何組のお客様を案内するのですか?
  • Q6. 今まで案内したお客様はどのような旅程で観光したのですか?
  • Q7. 有料でお客様を送迎するには営業許可が必要なのですが、所謂「白タク問題」で摘発された例を聞いたことはありますか?

Q1. どのような経緯でドライバーの仕事を始めたのですか?

中国からの不動産投資家の接待でドライバーを経験、今では旅行客を案内するドライバーに転身

留学をきっかけに来日し、大阪に住み始めてからもう7年経ちました。仕事で車を運転し始めたのは3年ほど前でまだ在学中の頃でした。その当時、不動産会社と貿易会社のアルバイトを掛け持ちしており、不動産の視察等を兼ねて中国のお客様を京都まで運転して連れて行き、一緒に食事をするような接待をしていました。それから少し経って中国から日本に訪れる個人観光客が増えたことで、 日本在住の中国人ガイド兼ドライバーの需要が高まりました。最初は副業としてドライバーの仕事を始めましたが、この仕事で多忙になり、1年ほど前から専業で働いています。

Q2. どのように中国のお客様を集客するのですか?

ガイドの仕事をした関係で、旅行会社からドライバーの依頼を受ける

私はツアー・コンダクター(添乗員)の資格を持っており、団体ツアーのガイドを経験したことがあります。中国のお客様を免税店に連れていく激安団体ツアーが日本のメディアで多く取り上げられていますが、私が働いたことがあるのは学生団体などを対象とする正規ツアーのガイドです。中国の旅行会社とは以前から信頼関係を築いており、今では少人数ツアーのガイド兼ドライバーの仕事依頼が増えるようになりました。

海外旅行者向けの配車アプリが参入し、個人間でのドライバー手配が可能に

旅行者とドライバーをマッチングするアプリを利用する方法もあります。私が知っている限りでは、このようなアプリが20ほど存在しており、私も3つほど登録しています。特に、配車アプリ「皇包车」はドライバーの登録数が最も多く、旅行者の間でも大人気です。ただ、アプリ経由での仕事は価格競争で安い傾向にあり、私は旅行会社経由でお客様の紹介を受けることがほとんどです。ドライバーとして旅行会社やアプリに登録するには 運転免許書, 車検証, 車の写真 さえあれば誰でもできます。

2回目以降のドライバー手配はアプリや旅行会社を通さず、直予約

旅行会社経由で知ったお客様の中には、日本に再び訪れる際に旅行会社を通さずに私に直接ドライバーを依頼することも少なくありません。以前に取引があると信頼感があるため、旅行者とドライバーの双方にとって安心感が生まれます。同じお客様からドライバーの依頼を4度受けたこともあり、大阪在住の私に東京での案内を依頼した例もあります。

Huang Bao Che補足: 中国人海外旅行者向け配車アプリ「皇包车」のキャッチコピーは「华人导游开车带你玩(日本語訳:中国人ガイドがあなたを乗せてドライブします)」

Q3. どのような中国のお客様がドライバーを依頼するのですか?

団体ツアーは大衆向け、少人数ツアーは富裕層向け

元々、個人で日本を旅行する場合、ビザを取得する過程である程度の収入層であることを証明する必要があります。団体ツアーに頼らず、個人で日本に来られる方は収入が多い傾向があります。今まで案内したお客様は北京や上海出身の方が多く、政府官僚, 大企業の社長, 著名人 もいます。私が運転する車はトヨタのアルファードのような7人乗りの車種のため、一人やカップルのお客様は少なく、家族連れや友人同士のお客様が利用するケースが多いです。

Q4. どのような報酬体系になっているのでしょうか?

配車アプリ「皇包车」の参入で、旅行会社も価格競争にさらされる

日当ベースで報酬体系が決まるケースがほとんどです。私がドライバーを始めた頃は、1日あたりのお客様料金は5万円〜6万円でした。ただ、「皇包车」が市場参入したことで、1日あたり3.5万円〜4万円まで下がりました。アプリ経由の場合は価格競争の影響を受けやすく 、私は旅行会社経由で頂く仕事をすることがほとんどです 。旅行会社はガイドの質が旅行の満足度を左右することをよく理解しているので、経験豊富なドライバー対しては4.5万円〜5万円(ドライバーの宿泊代込み・高速代抜き)が一般的な市場価格です。ただ、「皇包车」の参入で、旅行会社も価格競争にさらされており、ドライバーの日当も以前よりも少なくなりました。お客様が旅行会社とアプリでの価格を見比べて、安くドライバーを提供できるアプリを選ぶ場合もよくあります。

ガイド経験が浅いドライバーも増えて、全体的にドライバーの手配料金が下がる

ドライバーの日当が下がった理由には、ドライバーの供給が増えたこともあります。「皇包车」に登録する大阪在住のドライバーは2年ほど前には500人あまりでしたが、今では1,200人以上まで増えました。すでに自家用車を保有しており、小遣い稼ぎのためにとドライバーを始めた方が私の友人の間でも増えました。このように副業として低収入でも厭わないガイド経験が1年以内のドライバーが多くなりました。そのような方の中には関西空港・大阪市内間の送迎だけを行う方もいらっしゃいます。

Huangbaoche_Japan補足:2017年8月14日現在、「皇包车」に登録するドライバー数は 東京(1,827人), 大阪(1,244人), 北海道・札幌(284人), 沖縄・那覇(164人)と公表されている。

Q5. 1ヵ月あたり何組のお客様を案内するのですか?

ツアー初日から最終日までの依頼が多く、1ヵ月あたり4組までが限界

1組あたり5日間〜1週間の旅程が多いため、1ヵ月あたり平均で3組を案内します。1ヵ月あたり4組を案内するとほぼ休みがない状態になります。特に7月〜8月の夏休み期間は繁忙期で、旅行会社から他のドライバーの紹介を頼まれることも多々あり、旅行会社はガイド経験が1年以内のドライバーにも依頼せざるをえない状況です。さらに、中国の旅行会社が 「皇包车」の担当者に連絡して、直接ドライバーを低価格で手配する場合もあります。

Q6. 今まで案内したお客様はどのような旅程で観光したのですか?

関西だと京都が大人気、最近はドラゴンルートの旅程も徐々に増える

関西空港から京都に向かう旅程が人気です。関西の観光だと 京都, 奈良, 大阪 の観光地巡りが定番です。私は金閣寺などの観光地の歴史を予備知識として勉強したのですが、お客様の興味は日本の「昔」よりも「今」にあるように感じます。日本人家庭の暮らしぶりや教育などの話題が多く、日本に住んでいる私の経験則を交えた話にお客様は満足しているように感じます。最近では、中部国際空港から 下呂温泉, 飛騨高山, 立山 に向かう旅程が関西の旅程に比べてドライバーの手配料金が高いのですが、関東や関西をすでに旅行されたリピーターの間で徐々に人気になっています。

ドライバーの手配が好まれる理由として、旅程の自由度

ドライバーを手配するメリットとして、限られた範囲内であれば自由に行動できることです。都市間の移動になると、追加料金が発生したり、時間的に不可能だったりするのですが、移動距離が少なければお客様が旅程をその日に変更することが可能です。最近の例で、お客様がデパートでの丁寧な接客に感動されて、大阪・阪急百貨店で1日中ずっと買い物を楽しまれ、クリスチャン・ディオールやシャネルなどの高級ブランド店で400万円相当の高級バッグやアクセサリーを購入したこともありました。

Q7. 有料でお客様を送迎するには営業許可が必要なのですが、所謂「白タク問題」で摘発された例を聞いたことはありますか?

「白タク問題」の違反意識が薄く、ライドシェア(相乗り)に対する法改正が必要と訴える

友人から聞いた話ですが、白タクで摘発された例として、沖縄で白タクを運転するドライバーがタクシー乗り場に駐車し、タクシー運転手と小競り合いになり、警察に通報された後に中国に帰る羽目になったと聞きました。ただ、交通ルールさえ守れば、警察と問題になることはまず無いと思います。金銭の授受も中国の口座間やアリペイで行われるため、利害関係を第三者が確認するのもほぼ不可能です。民泊が合法化されるように、白タクも法整備を進めて、合法的に運営できる体制にする必要性を感じています。

以上、「白タク」の現役ガイドとのインタビュー内容をお届けしました。

団体・個人に関わらず、中国の訪日市場は「白ナンバー」が独占しており、正規料金で手配する旅行会社にとって、公平な競争環境とはいえない現状です。すでに法改正が進んでいる「民泊」のように「白タク問題」も規制を緩めるのか、それとも現法に基づいて取締りを強化するかしなくては、法律に従って運営している旅行会社が市場競争力を失うことになりかねず、当社としても悩ましい問題です。

INBOUND RESEARCH .jp では今回のように「耳障りの悪い情報も、世の中に提供したい」をモットーにインバウンドの現場で起きているありのままの真実をお伝えしていきます。引き続き、ご覧いただけますと幸いです。

Comments

comments

お問い合わせ
新着調査データ