OsakaHalalRestaurant

【外食シリーズ】急増する訪日ムスリム観光客、「大阪ハラールレストラン」のムスリム・オーナーが日本のハラール料理事情について語った。

当社が取り扱う団体ツアーの東南アジアのお客様は国ごとで宗教や食文化が大きく異なり、インバウンドのきめ細かい食事手配が求められます。前回は当社が運営する訪日団体客向け予約サイト「JAPARES」の運営者がマクロな視点でインバウンドの食事トレンドをお伝えしました。今回は、インバウンドと直に接している飲食店側のミクロな視点でインバウンドの「食」を深掘りしていきます。

今回のお題は「ハラール」。ハラールとは食事に限らず、イスラム教の戒律で合法とされている事や物のことです。大阪市内唯一の大阪マスジド(モスクのアラビア語読み)の近くにハラール完全対応の本格パキスタン料理専門店「大阪ハラールレストラン」を構えるオーナー、アバスィ・カリード・メヘモンドさんに大阪のハラール料理事情や日本に在住するムスリムやムスリム旅行者の食事ニーズについてインタビューを行いました。

そして、大阪の某有名日本食ハラールレストランに潜入し、東南アジア系のムスリム旅行者からハラールの日本食ニーズについてもお聞きしました。

果たして、ムスリム旅行者は日本で何を食べて、どのような旅程で旅をしているのでしょうか?

統計から分かる、世界中で急増するムスリム人口

2035年までに世界のムスリム人口はクリスチャン人口を越える

宗教や人口統計等を調査する米シンクタンクのピュー研究所によると、イスラム教徒はキリスト教徒より中間年齢が低く、イスラム教徒の高い出生率と低い死亡率により、世界のイスラム教徒人口が2035年にはキリスト教徒人口を上回ると予想されています。世界的なイスラム教徒の増加や経済レベルの向上により、日本に訪れるイスラム教徒も増え続けると考えられます。

アジア主要国では インドネシア, マレーシア, シンガポール のムスリク率が高い傾向に、欧州のムスリム人口は移民や難民問題の影響で急激に伸びている

アジア主要国のムスリム率と訪日率に着目してみると、日本に訪れるムスリム(イスラム教徒)は主に インドネシア, マレーシア, シンガポール だと推測できます。タイとフィリピンのムスリム率は5%台と東アジアに比べて比較的に高く、タイ南部とフィリピン南部のムスリム率が高い傾向にあります。ムスリム率が90%以上のバングラディッシュとパキスタンの訪日率は公式な統計データの公表がないものの、これらの国の経済発展とともに今後訪日客が増加する余地があると考えられます。そして、欧州主要国はロシア(11.7%)とフランス(7.5%)のムスリム率が特に高く、トルコ移民や難民問題でムスリム人口の伸び率はアジア主要国よりも高く、欧州のムスリム人口の増加が訪日業界に与える影響も考慮に入れる必要があります。 ムスリム率と訪日率出典:ムスリム人口とムスリム率はピュー研究所の統計を引用し、訪日率は2016年の年間訪日外客数に国連統計の各国人口を割って算出。

100%ハラール対応の本格パキスタン料理専門店、「大阪ハラールレストラン

大阪マスジドの目の前にあるハラール完全対応の本格パキスタン料理専門店。国外はマレーシアの通商産業大臣(アフマド・マスラン氏)や観光文化大臣(モハメッド・マズル氏)、国内は加藤ミリヤさんなどの芸能人も訪れた。モスクに礼拝に来た方にハラール料理を提供し、日本の方にもハラールを知ってもらいという思いから「大阪ハラールレストラン」という店名にした。スパイスは海外から直輸入し、ハラール肉は関東の信頼を寄せる業者から取り寄せながらも、良心的な価格で本格パキスタン料理を提供。大人気メニューはシェフ自慢のブリヤニ(スパイスを効かせた鶏肉の炊き込みご飯)。 OsakaHalalRestaurant

質問項目

  • Q1. どのような経緯で日本へ移住し、大阪でレストランを始めたのですか?
  • Q2. どのようなお客様が大阪ハラールレストランをいらっしゃるのですか?
  • Q3. ムスリムでも国ごとで料理の嗜好は違いますか?
  • Q4. ムスリム・フレンドリーになるために日本が今後できることは何ですか?

Q1. どのような経緯で日本へ移住し、大阪でレストランを始めたのですか?

バブル絶頂期に来日、「言語」と「ハラール料理の乏しさ」に最も苦労した

私が初めて来日したのは1986年でした。東京・銀座でパキスタン料理屋を営むシェフが私を日本に連れてきたのがきっかけです。当時、日本はバブルの真っ只中。パキスタンでは3階建てしか見てこなかった私にとって高々と立ち並ぶ高層ビルが東京の第一印象でした。その当時はまだ日本語は話せなかったですし、日本人は同じ顔に見えてしまい、名前を覚えるのに苦労しました。そして、言語以外で最も苦労したのが「食事」でした。私が働くことになった銀座のパキスタン料理屋の豆カレーや野菜料理しか食べられず、ハラール認証のオーストラリア産のマトンでさえもハラールであるのかどうか疑わせる匂いをしていたため、食べられませんでした。当初は4年ほど働いて、家族のいるパキスタンに帰ろうと考えていました。

大阪の人情に触れて大阪への引っ越しを決意、仕事探しは押しかけ面接の日々だった

大阪に住み始めたのは来日してから3年経った1989年のことでした。きっかけは大阪に観光に来たことで、時折言葉は厳しいが大阪の人情深さに惹かれて、東京から大阪に引っ越すことに決めました。大阪の仕事探しは求人がないのにも関わらず、アポなしで社長に直接会おうと様々な企業にアプローチをかけました。ほとんどの企業が外国人だからとお断りといった状態でした。そんな中、とある製本会社を訪問した際に、そこの社長の息子さんがドイツ留学を経験したこともあり、外国人を雇うことに他社よりも寛容だったので、実務チェックを合格するとすぐに入社することができました。製本会社では3年ほど働いた後に、車関係の貿易会社で18年ほど働き、UAEで事務所の立ち上げと運営を任されるようになり、日本にいない時期もありました。その当時、料理はラマダンの時期に友人のために手料理を振る舞うくらいでした。

モスク開設をきっかけにハラールレストランを立ち上げる使命感に駆られる

そして、大阪市内で唯一となる大阪マスジド(礼拝所)が2010年に建ったことがレストランを立ち上げるきっかけになりました。モスク開設当時はモスクがあるのにハラール料理店がなく、モスクに礼拝に来る人に料理を振る舞いたいと思うようになり、レストランの立ち上げに着手し、2013年に「大阪ハラールレストラン」をオープンさせました。

Osaka Masjid以上、大阪ハラールレストランの目の前にある大阪マスジド

Q2. どのようなお客様が大阪ハラールレストランをいらっしゃるのですか?

本格料理が食べられる数少ない店として、意外にも日本人客に大人気!

ムスリムの礼拝者に向けてレストランをオープンしたのですが、面白いことに日本人のお客様が70%ほどを占めています。日本人の口に合わせた甘いカレーではなく、本格料理が楽しめる店は稀だと国内のお客様は喜んでくださいます。オープン当初は立地条件が良くないからか、お客様が平日で5名ほどしかいない時期もあったのですが、今では東京や福岡からわざわざ立ち寄ってくださる方もいます。日本人のお客様にハラールについて知ってもらおうと話しかけるのですが、インターネット等で調べて基礎知識を得て来店される方が多くてびっくりしました。

金曜日はムスリムのお客様が多数来店、破格の値段でビュッフェを提供

日本在住のムスリムのお客様は金曜日に来店されることが多く、来客数は150人〜200人ほどまで増えます。そして、金曜日が祭日の場合は、400人ほどまで増えます。ムスリムのお客様にとって、金曜日は家族でモスクにお祈りに来て、食事を共にして家族との時間を大切にする風習があります。金曜日に限っては来客数が多いので、1,200円の破格の値段でブッフェを提供しています。金曜日だけでマトンの消費量が40キロを超えるほど大盛況です。他の曜日も通常2,300円くらいするブリヤニセットを当店では1,500円で提供しており、料理の美味しさはさることながら、価格も良心的に抑えています。

ムスリム旅行者は東南アジア系が多く、モスクでの礼拝と本格ハラール料理で大盛況!

そして、30名〜50名のムスリムの団体旅行者も月2回ほど受けていれています。特に シンガポール, マレーシア, インドネシア からの団体が多く、「マレーシアでもお店を出してほしい」や「明日の旅程に入っているレストランを変更し、またここで食べたい」といった反響と頂いております。

ムスリムオーナーの経営、モスクとの地理関係からハラール認証は不要

国内客とムスリム客の違いとして、日本のお客様が物珍しさにハラール認証を見るのに対して、ムスリムのお客様はモスクの目の前という地理関係とオーナーの私自身がムスリムの風貌をしているので、ハラール認証は必要ありません。ハラール認証よりもレストランのオーナー自身がムスリムであることが重要なのです。

Halal Food以上、大阪マスジドに隣接するハラールストア。ハラール肉が冷蔵庫にあり、タイ, インドネシア, パキスタン などの輸入商品も販売されている。

Q3. ムスリムでも国ごとで料理の嗜好は違いますか?

アラブ系は辛いものが苦手、東南アジア系は辛いものが好き

ムスリムにとって、まずはハラールであることが大前提です。料理の味は二の次です。料理の国別の違いとしては、アラブの方は辛いものが苦手で、マレーシア, シンガポール, インドネシア の方は辛いものが好きな傾向があります。ただ、ブリヤニはムスリムで万国共通で美味しく召し上がられ、マレーシアのナシゴレンやサウジアラビアのカプサの米料理を連想させるからかもしれません。そして、日本食をハラールで食べたいというニーズは マレーシア, シンガポール, インドネシア の方が強いと感じています。

Buriyani Set 2大人気のCセット(1,500円):カレー2品+ブリヤニ(パラオ)+デザート(土日祝のみ)

Q4. ムスリム・フレンドリーになるために日本が今後できることは何ですか?

ハラール料理店と礼拝所が増えることに期待、ムスリム在住者にとっての課題は「礼拝」と「給食」

日本ではまだハラール料理店や礼拝所が少ないと思います。時間がない観光客(ムサイフと呼ぶ)は簡易礼拝所でお祈りをしますが、旅行先でもモスクでイマーム(模範となる指導者)から学びを得ながら、落ち着いて神様に感謝しながらお祈りできるのは幸せなことです。まだ大阪市内でモスクは1棟しかなく、モスクが今後増えればムスリムにとって住みやすくなると思います。最近では外国籍のムスリムと日本人とのハーフが増えており、学校での給食や礼拝でムスリムに配慮が必要だと感じています。給食で魚や野菜以外の料理の日には弁当を持たせるムスリム家庭も多いのが現状です。

日本人の優しさや治安の良さが日本の素晴らしさ

ただ、ムスリムに対して優しく、治安の心配がいらないのが日本の素晴らしいところです。ムスリムに対して差別意識があまりなく、道に迷った時には駅までついてきてくれたりと日本人はとても親切です。言語は違えど、治安の良さは旅行を決める上で重要な点です。

以上、大阪ハラールレストランのオーナー、アバスィ・カリード・メヘモンドさんとのインタビューをお届けしました。 Osaka Halal Restaurant以上、左から順に、当社で中東営業を担当するウズベキスタン出身のジャスールさん、大阪ハラールレストラン店長のアバスィさん、現代社会で慈愛の精神が最も強い宗教だと改宗した日本人ムスリムのアリさん、当サイトで記事の執筆を担当する私

取材中にお会いしたお客様からの声

大阪ハラールレストラン、礼拝に来ていたフランス人のムスリム在住者

大阪ハラールレストラン」の取材中にお客様として来店したフランス人のムスリム客は短期間の研究員として来日し、来日後すぐにモスクの位置を調べ、実際に礼拝に来たついでに来店したのがきっかけのようでした。レストランには月に2回ほど通っているリピート客でした。

大阪の某有名日本食ハラールレストラン、マレーシア人のムスリム観光客

一方、後日、大阪の某有名日本食ハラールレストランを訪れ、まずは「大阪ハラールレストラン」では禁止しているアルコールの販売をしていたのに驚きました。ただ、豚料理は一切なく、「酢豚」ではなく、「酢鶏」というメニューがあったり、ラーメンも鶏ベースのものでした。そのレストランに来店していたマレーシア人6名の個人旅行客はたこ焼きとお好み焼きを注文しており、ラーメンはマレーシアのスパイスと違って味気がないようで注文はしていませんでした。彼らの話によると、3年ほど前に日本に来た友人はハラールレストランを探すのに苦労し、毎日パンを食べていたという恐怖体験を聞かされていたのですが、今では日本でハラールの店が増えたことで、旅行中の食事に不自由をそんなに感じないとのことでした。ちなみに、今回の訪日が初めてで、すでに東京に4泊、大阪で4泊されており、日本で最も印象に残った思い出は「USJ」でした。マレーシアやシンガポールでは日本のような本格的なテーマパークはないので特別だったようです。

IMG_0200以上、Googleで「大阪のハラール料理」と調べた時の検索結果。

お会いしたマレーシアの観光客によると、マレーシアでは基本的にハラール対応しているため、対応していない場合に注意書きがあるのに対して、日本ではハラール対応している店をあえて探す必要があるようです。従って、ハラール対応の店のみを掲載するような媒体はマレーシアでは必要がなく、日本のハラール料理探しは特定の媒体を使うのではなく、Google検索が一般的だそうです。本当にハラールなのかはハラール認証を確認したり、口コミもチェックしていました。

本メディア「 INBOUND RESEARCH .jp 」では、旅行現場での生の声をもとに作成した自主調査記事を隔週配信いたします。インバウンドのリサーチやプロモーションに関する質問等ございましたら、以下のお問い合わせフォームより気軽にご連絡いただけますと幸いです。今後ともご覧くださいませ!

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