Front Picture

【インバウンド夜遊び特集】 米トリップアドバイザー・ナイトライフ部門、 東京No.1に輝いた東京パブクロールが欧米人に大人気なワケとは。

今回は、欧米豪を中心に観光の一部になっているナイトライフに注目し、訪日インバウンド観光客は夜にどこで何をしてるのかを探ります。観光施設が開いている昼間の行動経路に注目が集まりがちですが、流動性が低い夜間でインバウンド観光客は何をしているのかを知るために、「TripAdvisor」の東京ナイトライフ部門で堂々の第1位に輝いた「東京パブクロール」でイベント・マネージャーを務める Joji Kurosawa(黒澤 穣二)さんにインタビューを行いました。

さらに今回は、株式会社NTTデータ経営研究所との特別共同企画として、観光分野での調査・コンサルティングで実績のある同社が、政府の統計データ(地域経済分析システム(RESAS)等)やTripAdvisorの口コミ情報などをもとにデータ分析を行いました。

果たして、インバウンド観光客は日本の夜をどのように過ごしているのでしょうか?

統計から分かる、東京に集中する欧米人の夜間人口

訪日外国人の夜間人口の約半数が東京と大阪に集中、アジア人は「大阪好き」、欧米人は「京都好き」

アジア人旅行者と比較して、欧米人旅行者の夜間人口は東京都が高く、大阪府が低い傾向があります。関西ではアジア人旅行者が大阪府に集中するのに対し、欧米人旅行者の夜間人口は京都府が大阪府に並ぶほど多い傾向があります。大阪などで深夜以降も営業する「ドン・キホーテ」などでショッピングを楽しむアジア人旅行者と、京都などの歴史や文化に興味がある欧米人旅行者という典型的な傾向を連想させます。

アジア人は分散傾向、欧米人は関東と関西に集中傾向、南半球の豪州は冬のリゾート地が大人気

アジア人旅行者は 北海道, 沖縄県, 福岡県 の地方都市にも訪れる傾向があり、夏と冬に観光客が突出する北海道は季節変動性が高く、定番の東京と大阪を結ぶゴールデンルートに次いで人気になっています。一方で、欧米人旅行者は関東と関西の都道府県に偏る傾向があり、南半球の豪州では日本でウィンタースポーツ関連の旅行ニーズが高く、1月〜2月はスキーリゾートで世界的に有名な北海道と長野県の両県を合算した夜間人口が東京都を超えるほど大人気です。

図表1:外国人滞在分析(夜間人口):世界(大陸別)

RESAS Stats体験重視の欧米人、歴史や文化を深く知り、日本人との交流を期待して来日

インバウンド観光客の関心として、国籍に関わらず、「日本食を食べること」が訪日前に最も期待していたことで最上位に上がっています。ただ、2位以下の項目に着目すると、アジア人旅行者は観光地巡りとほぼ同じ比重でショッピングを重要視しているのに対して、欧米人旅行者は日本の歴史や文化、日本人との触れ合いに期待していることが分かります。また、南半球で季節が日本と逆の豪州では冬にウィンタースポーツを目的に日本に訪れる人の割合が他の国と比べて突出しています。

図表2:訪日前に最も期待していたこと(単一回答):世界(大陸別)

Favorite Things to Do

外国人旅行者は「TripAdvisor」、日本在住の外国人は「Meetup」でイベントを知る

東京パブクロールがイベントの集客に役立てているサイトとして、旅行者からの口コミを主な情報源とする「TripAdvisor」と共通の地域・趣味を持つコミュニティー作りを目的とした「Meetup」があります。TripAdvisorは観光カテゴリー別で検索できて、カテゴリー内ではユーザーの口コミ評価などでランキング形式で閲覧することができ、観光客が旅程を立てる際に役立っています。一方で、Meetupは趣味の分野別にイベントグループの検索ができ、興味のあるグループの登録人数や過去と未来のイベント内容を確認することができます。本来は同地域に住む人がオフラインで会うのが目的ですが、在住地域以外のイベントも検索でき、旅行者がイベントに参加するのにも役立っています。なお、Facebookでもイベントを設定する機能があり、参加者がSNSでシェアすることでイベントの認知度の向上にも繋がります。

Tripadvisor

meetup1

国際交流をしながらバー巡りが楽しめる「東京パブクロール

東京パブクロールは東京でいくつかのバーを巡り、最後はクラブで終わるイベントを金曜日と土曜日に開催しています。シャイな人でも各バーで飲み進めることで、見知らぬ人とも社交的になり、最後にほろ酔い気分でクラブで踊って盛り上がれるようなイベント構成になっています。各所でテーブルチャージを気にせずに複数のバーとクラブが楽しめ、イベント参加者は特別メニューや割引の特典があります。前売り価格は男性2,500円、女性1,500円。毎週、テーマが変わり、日本に在住する外国人でも飽きないように工夫しています。現在では、大阪と京都でもパブクロールを行なっています。

「東京パブクロール」インタビュー質問項目

  • Q1. どのような経緯で東京パブクロールで働くようになったのですか?
  • Q2. どのように東京パブクロールは始まったのですか?
  • Q3. どのような客層が東京パブクロールに参加するのですか?
  • Q4. 東京パブクロールがTripAdvisorで高評価を受けている理由は何ですか?
  • Q5. 東京パブクロールの運営者が苦労していることは何ですか?
  • Q6. 東京パブクロールで思い出に残っているストーリーは何ですか?
  • Q7. 今後、東京パブクロールが目指していることはありますか?

Q1. どのような経緯で東京パブクロールで働くようになったのですか?

日本国籍を選んだJojiさん、青春時代を過ごしたフィリピンを思い出すコミュニティーを探していた

私は母親がフィリピン人、父親が日本人の家庭で生まれました。幼少期は日本で育ち、12歳から21歳までフィリピンで暮らしていました。21歳になると、日本とフィリピンの二重国籍だったため、日本もしくはフィリピンの国籍を選ぶ必要がありました。経済レベルの高さやビザ免除国の多さを考えると、フィリピンよりも日本のパスポートの方がメリットが多く、深く考えずに日本国籍を選びました。ただ、21歳で再び日本で暮らし始めたものの、日本語がうまく話せず、すぐにホームシックにかかり、フィリピンの友達とスカイプで話すことで気を紛らわしていました。仕事はフィリピンの大学で勉強したモーション・グラフィックスと英語の教師を掛け持ちしており、多忙な日々を送っていました。日本に来てからの3年間、日本人とのハーフでありながら、日本の社会に溶け込めきれず、日本人の友達もあまりできず、孤独感や喪失感で誰かと心置きなく話したかったのが当時の心境でした。フィリピンに帰りたいと強く思うこともありました。

イベントで盛り上がったJojiさんが創業者の目を引き、イベントの運営者になった

そこで、「Meetup」でビデオ編集などの共通の話題を持った人が集まるイベントに参加しました。さらに、青春を過ごしたフィリピン時代の自分に戻り、自然体で溶け込めるコミュニティーを探していると、Meetupで「Tokyo Pub Crawl(東京パブクロール)」を見つけました。参加してみると、フレンドリーな日本人参加者と海外旅行者が多く、とても国際的な環境でした。イベントの途中でゲストが壇上に上がってゲームをしたり、歌ったりする場面があり、すでにお酒が回っていた私は誰よりも大きな声を出して盛り上げていたところ、東京パブクロールの創業者であるAndrewの目を引きました。その後、Andrewの誘いで東京パブクロールの運営メンバーとしてイベントに参加するようになり、今ではイベントホストとして表舞台からイベント企画やビデオ編集の技術を生かしたマーケティング戦略の裏側まで幅広く携わっています。

写真:創業者のAndrew(左)とゲストと一緒に盛り上げる運営スタッフ(右奥)

Event3

Q2. どのように東京パブクロールは始まったのですか?

創業者はアメリカ出身の2人組、シェアハウスでパブクロールのアイデアを思いつく

東京パブクロールの創業者は Andrew Ngyuen(アンドリュー・グエン)と Brett Berghauer(ブレット・バーグハウアー)のアメリカ出身の2人です。AndrewとBrettはシェアハウスで出会い、夕方には一緒に飲みながら、より多くの人が交流する場所が作りたいと、東京パブクロールのアイデアを思いつきました。2人ともイベント運営の経験があり、それぞれの長所を活かし、Andrewは表向きのイベントホスト、Brettは裏側のイベント企画や管理を担当したそうです。記念すべき第1回のイベントは2011年に開催し、創業者の2人が友人を呼びかけ、街頭ではイベントのチラシを配布して集客したこともあったそうです。

初回はすでに40人を集めるほどの盛況ぶり、今では最大600人規模のイベントに成長

第一回のイベントですでに40人もの参加者が集まり、それ以降はイベントの集客人数が10人以下に切ったことがないほど大盛況だったそうです。当初は旅行者をターゲットにせず、国際交流に興味がある日本人が多く参加しました。2013年には会社を設立し、事業化するまでに至りました。今では100人〜150人が参加するイベントまでに成長し、ハロウィン、クリスマス、年越しなどのスペシャルイベントで最大600人まで参加者が増えたことがあります。何度も参加する人でも飽きないように、金曜日と土曜日は開催場所を変え、週ごとで違ったテーマでイベントをしています。

Q3. どのような客層が東京パブクロールに参加するのですか?

近年、外国人旅行者も多数参加、日本在住の外国人はリピート客が多い

今ではTripAdvisorなどの口コミを見て参加する旅行者が増えました。根強いリピート客として、日本に在住する英語の先生や横須賀に駐在する米軍関係者も多く参加しています。特にアメリカ人が集まっている横須賀基地では東京パブクロールの認知度が浸透しており、ハロウィンなどのアメリカ文化をテーマにしたイベントになると、横須賀から多くの米軍従事者が訪れ、翌日の始発まで盛り上がっています。東京パブクロールでは終電を逃した方も楽しめるようにスタッフ1名は必ず残り、終電後も開いているバーで始発までイベント参加者と会話を楽しんでいます。

日本人は「国際交流」や「英語学習」に興味がある人が多い

日本人の場合は「国際交流」や「英語学習」などのキーワードで調べて、イベントに参加する日本人も多くいます。金曜日の夜は、会社帰りの日本のサラリーマンも参加し、ほろ酔い気分で一緒に踊ったりするのも、外国人にとっては日本らしいローカル感がある体験になっています。

Q4. 東京パブクロールがTripAdvisorで高評価を受けている理由は何ですか?

一人で来た人でもグループに溶け込めるようにスタッフが積極的に声をかける

当たり前かも知れませんが、「顧客満足」を大切にしています。日本人のゲストはシャイな人が多く、外国人のテンションを盛り下げてしまったり、ついていかなかったりします。そのような場面にスタッフが出くわせたら、場を盛り上げたり、溶け込めやすい環境をつくることに心がけています。スタッフは日本語と英語の両方が話せて、日本と外国の文化への興味と理解があることがとても重要です。そして、何と言っても、イベントを盛り上げるカリスマ性と親しみやすい人柄も求められます。

週ごとでテーマを変えることで、日本在住のリピーターも飽きない

何度も来るリピーターでも楽しめるように、毎週、違うテーマでイベントを開催しています。例えば、大人気のハロウィン・パーティー、80年代、90年代、カップ以外の器で飲む「Anything But Cups」、白シャツを着たゲストがお互いに好きな文字を書き合う「Draw on Me」などがあります。「Draw on Me」は好きな文字を書き合うことで日本人と外国人の距離感が縮まり、自然に会話が生まれやすく大人気です。

写真:白いTシャツを着た参加者同士で好きな文字や絵が書けるテーマの「Draw On Me」

DrawOnMe東京パブクロールをきっかけに友人になり、異性間の出会いでは結婚や出産に至った例もある

来日したばかりの外国人が心置きなく話せるコミュニティーを求めて参加するケースもあります。東京パブクロールをきっかけに友達になり、イベント以外の場で交流を深める人もいます。その中には、異性間の出会いもあり、ゲスト同士で結婚や出産したといったハッピーな知らせも聞いています。

旅行者が昼間に行ける場所は多いが、夜間に行ける場所は少ない

テラス席が多い欧米に比べて、東京のバーや居酒屋は地下や2階にあったりと、店を探すにくい上に、言語や文化の壁を心配する外国人旅行者が店に入るのに躊躇してしまいます。日本人の接客スタッフは外国人をどうもてなすのかも分からず、面倒くさがられることもあります。そのため、夜間にどこで何ができるのか分からない外国人が多く、東京パブクロールは外国人旅行者が抱える不安を解消してくれるのだと思います。さらに、六本木のバーは金曜日と土曜日の夜7時〜夜10時であっても集客が難しい時間帯で、金曜日と土曜日の両方に来てほしいというバーの運営者の声も少なくありません。まさに旅行者もバーもウィンウィンの状況です。

アルコール飲料メーカーとコラボレーションした事例もある

今ではドイツのアルコール飲料メーカー「Jägermeister(イェーガーマイスター)」がスポンサーに付いたイベントも開催し、Jägermeisterと Tokyo Pub Crawl のロゴが入ったコラボTシャツやJägermeisterのミニボトルをサンプルで配布しました。ゲストだけでなく、企業も注目してくださっています。

写真:Jägermeisterのミニボトルの無料配布でさらに盛り上げる東京パブクロールの集合写真

Jagermeister4

Q5. 東京パブクロールの運営者が苦労していることは何ですか?

イベントが終わっても、次のテーマを常に考え続けている

週ごとでテーマを変えているので、イベントが終わってもすぐに次の新たなテーマを模索し、スペシャルイベントのハロウィンなどは数ヶ月前から企画を考えています。東京パブクロールはオフィスがなく、ミーティングはカフェで行い、毎回場所を変えています。創業者以外のメンバーは他にする仕事の間を縫って、イベントの準備にあたっています。

いくつかのバーをグループに分かれて移動するので、時間通りにゲストを誘導しなくてはならない

イベントの最中に最も苦労することはゲストを一斉に誘導することです。東京パブクロールでは、ゲストを色別に分け、1名のスタッフが40名ほどのゲストを誘導できるように役割分担をしています。各グループの1人1人まで目が行き渡るように工夫しています。ただ、ゲストが違う色のグループに移動したい場合にも柔軟に対応しています。そして、各グループごとにいくつかのバーをローテーションしており、各グループが時間通りに一斉に移動するのに運営メンバー同士が意思疎通することが大切です。ゲストがイベントで盛り上がってる最中であっても、時間通りにゲストを誘導しないと、店の出入り口で混み合ってしまいます。イベントの最後にはゲスト全員がクラブで再会できるようになっており、イベントホストも次の移動を考えることなく、ゲストのように飲みながら夜を明かすことができます。

Q6. 東京パブクロールで思い出に残っているストーリーは何ですか?

テーマもゲストも毎回変わるので、ホストにとっても唯一無二の体験

違うゲストが毎回来るのでどのイベントも唯一無二の体験です。イベントホストはゲストの特徴を見極め、面白いゲストには才能を披露する場としてステージに上げることがあります。過去には「 Britain’s Got Talent 」に出演した経験があるダンサーがステージで踊ったこともありました。他にも東京パブクロールが終わり、帰路に向かっていると、数人のゲストがイベントの続きだと間違えて着いて来たことがあり、私の狭いアパートでゲストと一緒に夜を明かしたこともありました。

Q7. 今後、東京パブクロールが目指していることはありますか?

パブクロールは大阪と京都でも大盛況、課題は人材探し

今後も東京パブクロールと同じ成功方式で外国人旅行者や外国人在住者が多い地域でイベントを広げていきたいです。すでに2015年には大阪、今年5月には京都でもイベントを始めました。創業者のBrettと一緒に大阪のイベントの立ち上げに参加し、雨が降っていた金曜日は参加者が8人と心配なスタートになりましたが、土曜日は50人ほど集客ができました。毎週土曜日に開催する大阪パブクロールは大阪在住のオーストラリア人、Andy Kenji Marsden(アンディ・賢二・マースデン)にイベントの企画と運営を委ねています。イベント運営では細々としてスケジュール管理と誰もが親しめるキャラクターでなくてはならず、そのような人材を探すのは容易ではありません。今年5月から毎月開催している京都パブクロールでは東京のイベントホストを派遣して開催しています。

写真:2回目にしてすでに大盛況の「京都パブクロール」の集合写真

Kyoto Pub Crawl創業者の情熱が東京パブクロールの成長の原動力

飲み歩き体験を提供する競合は他にもいましたが、イベントの準備が不十分だったり、イベントホストがゲストのことをあまり考えていない言動もありました。東京パブクロールが今の規模まで成長したのは創業者の情熱に尽きると思います。そして、バーやクラブとうまくタイアップできるのも、100人〜150人ほどの集客力があり、六本木の有名なクラブとも優位な条件が引き出せることです。

以上、東京パブクロールでイベント・マネージャーを務める Joji Kurosawa(黒澤 穣二)さんとのインタビューをお届けしました。

写真:東京パブクロールについて熱く語る Joji Kurosawa さんとのインタビュー風景

Joji Kurosawa Kamiya Mitsukuniさらに今回は、株式会社NTTデータ経営研究所との特別共同企画として、TripAdvisorの口コミ情報から東京パブクロールに参加する人の属性や満足度を分析しました。

口コミから分かる、「東京パブクロール」の人気の秘訣とは

東京パブクロールは訪日外国人だけでなく、日本在住の外国人も多数参加

口コミをした人の居住地は日本と アメリカ, オーストラリア, イギリス などの英語圏が多い傾向にあり、英語による口コミが全体の85%以上を占めています。意外にも日本在住の参加者が多く、東京パブクロールは、日本に住んでいる外国人、日本人、そして、海外からの観光客の交流の場として盛り上がる姿が浮かび上がりました。交流系のイベントでは、海外観光客のみならず、日本居住者のニーズも同時に把握することが必要であることが分かります。

図表3:居住地別で見た参加者の分布(国別、プロットの位置は便宜的に各国の首都)

map 棒グラフ (1)図表4:居住地と使用言語

バルーンプロット東京パブクロールは日本に住む人の評価が日本を旅する人よりもやや高い

東京パブクロールの満足度を示す平均口コミスコアは5段階評価で4.90と非常に高く、TripAdvisorの東京ナイトライフ部門で第1位になっています。居住地別で見ると、外国人旅行者の評価は日本居住者よりもやや低く、満点を下回った口コミには「混んでいた」や「終電に間に合わせるために途中で帰ってしまった人がいた」などの書き込みがありました。観光で日本に一時的に訪れる外国人は東京の狭さやイベント参加者が終電の時間を気にすることに慣れない一面もありました。また、旅行者別で見ると、友人と一緒に来た人が一人やカップルで来た人に比べて、イベントの満足度がやや高い傾向がありました。

図表5:居住地別の口コミ評価

スクリーンショット 2017-10-17 14.57.22図表6:旅行者タイプ別の口コミ評価

モザイクプロット(修正)東京は友人と参加、大阪は一人で参加が多い

開催場所で比較すると、東京は友人と参加する人が多いのに対して、大阪は一人で参加する人が多いという対照的な結果でした。大阪に比べて、人口密度が高く、外資系企業が多く進出している東京は、外国人の在住者と旅行者が集まりやすいため、イベントに一緒に行く友人が探しやすいと思われます。東京と大阪の両方のイベントに行った人の口コミによると、「東京はオシャレで規模が大きく、大阪は現地人が多い」という書き込みが見られました。

図表7:旅行タイプ

スクリーンショット 2017-10-17 14.59.49テキストマイニングその1:イベント参加者は新たな人との出会いを求めている

口コミ情報で頻度が高かった単語をランキングにした結果、「People(人々)」と「Meet(会う)」の組合せが、東京パブクロールの全体的な印象を示す頻出のフレーズでした。イベントの集客力を表すだけでなく、「friend(友人)」と「make(つくる)」が次に多く、東京パブクロールが、交流の場、出会いの場であることがテキストマイニングからも明らかになりました。

図表8:使用単語の係り受け関係(口コミ全体)

係り受けテキストマイニングその2:イベントの最中に配られる「無料」のショットがイベントの特徴を表す

感情表現を表す形容詞の使われ方では、「good」「great」「new」などが多く使われています。居住地別でも特徴が出ています。たとえば、割合の多い日本在住の参加者( 外国人, 日本人 )と英語圏の欧米豪の参加者の使う形容詞を比較すると、前者では「free(無料の/自由な)」「many(多くの)」「Japanese(日本語/日本人)」が、後者では、「First(初めて)」「other(他の)」という言葉が多く使われていることが分かります。後者の例として、「始発で他の人と一緒に帰った」や「最初のバーが見つけにくかった」や「他の旅行者とも交流できた」などがありました。

図表9:居住地別の単語使用頻度(形容詞)

3テキストマイニングその3:各国の特徴語を見ると、イギリス人のアルコール好きな傾向が分かった

テキストマイニングで居住地属性ごとに特徴となる言葉を抽出したところ(特徴語分析)、「Friend(友人)」は日本在住の参加者( 外国人, 日本人 )の間で使用頻度が特に高く、「友人に勧められた・勧めたい」との口コミがあり、友人の口コミがイベントの集客力に繋がっています。一方で、欧米豪の参加者のうち、アメリカは「Mix(交流)」、オーストラリアは「Local(現地の人)」、イギリスは「Local(現地の人)」が上位の特徴語として挙がっており、「現地の人との交流」が印象的だったようです。また、イギリスは「Shot(ショット飲み)」,「Bar(バー)」,「Drink(飲み物)」が上位の特徴語に上がり、アルコール好きな傾向が見受けられました。カナダは「Staff(スタッフ)」が上位の特徴語に入り、イベント進行におけるスタッフの重要性も認識されていたようです。

日本居住者( 外国人, 日本人 )の英語熱は高い

イベントの主要言語である「English(英語)」を含む口コミを分析すると、日本人は英語を話したい意識があり、また、外国人は英語が話せる日本人と交流できたという書き込みが目立っていました。一方、「Japanese」はというと、「日本語」の意味よりは、「日本人」の意味合いの口コミがほとんどでした。このことから、英語でのコミュニケーションを求める日本人に加え、日常生活で日本語を話す日本在住の外国人が英語で話せる息抜きの場として、このイベントに参加しているとも考えられます。

以上、株式会社NTTデータ経営研究所と共同で解析した「東京パブクロール」の口コミ分析結果をお届けしました。

全体のまとめ

インバウンド観光では訪日外国人の動向ばかり着目されがちだが、東京パブクロールのように交流を目的としたイベントでは日本居住者のニーズも把握することが必要であると分かりました。インバウンド観光市場は季節変動性が高く、スケール化が難しいのに対して、日本居住者はリピーターになりやすく、スケール化しやすいという市場の違いもあります。インバウンド観光事業では各国の細かなニーズに配慮する必要があるため、口コミ情報などで各国の嗜好を分析することが重要です。

東京パブクロールに関してはイベントの共通言語が英語であるため、言語の壁を感じずに視覚的情報だけでなく、日本に住んでいる外国人や日本人から知的情報が得られるのも訪日外国人旅行者の満足度に繋がっていると思われます。イベントは訪日外国人の需要が高くても、外国語能力に加えて異文化理解力やカリスマ性を持った人材の不足などの供給面で課題があり、訪日外国人が頻繁に使用する媒体でイベントの認知度を高めることも重要です。

当社が運営する INBOUND RESEARCH .jp では、インバウンドの自主調査記事を隔週、配信しております。インバウンド市場についてのプロモーションや調査に興味がございましたら、以下のお問い合わせフォームより気軽にご連絡いただけますと幸いです。

出典:

  • 図表1:観光庁「訪日外国人消費動向調査(2016年)」より作成。大陸別データ( アジア州, ヨーロッパ州, アメリカ州,  大洋州 )は各グループに属する国籍別データを訪日外客数で加重平均して算出。
  • 図表2:株式会社NTTドコモの携帯電話ネットワークを利用した「モバイル空間統計」に基づいてRESAS(地域経済分析システム)がまとめた外国人滞在分析より作成。2015年7月〜2016年8月の年間データを使用。
  • 図表3〜9:TripAdvisorの口コミ情報より作成。「東京パブクロール」及び「大阪パブクロール」の口コミ情報。2014年3月から2017年9月30日までの累計251件の口コミ(うち、東京は207件、大阪は44件)を分析。グラフは統計ソフトR(R Development Core Team)により描画。テキストマイニングについては、株式会社NTTデータ数理システムが提供する「Text Mining Studio」を活用。英語の口コミ分析にも対応している。

特別共同企画による執筆(データ分析、テキストマイニング):

株式会社NTTデータ経営研究所 社会システムデザインユニット マネージャー 實方 裕真

【株式会社NTTデータ経営研究所について】

NTTデータ経営研究所では、公共政策分野に係る調査研究・コンサルティング案件を多数実施しております。近年では、ビッグデータを活用した観光振興、観光地域ブランディング、防災・減災、テレワーク等による働き方改革、不動産の健全な流通、データに基づくまちづくり等、様々な社会課題に対応したテーマに取り組んでおります。また、IoT(Internet of Things)、ビッグデータ及びオープンデータ、人工知能(AI)等の新たなICTの公共分野における利活用に関する調査研究など、新たな社会システムに関する提言を数多く行っています。

特別共同企画による執筆執筆(インタビュー):

株式会社フリープラス 社長室 経営企画 神谷 充邦

【株式会社フリープラスについて】

株式会社フリープラスでは、訪日客特化の旅行会社として、インバウンド集客の課題を抱える企業様や自治体様に対して調査やプロモーションの代行サービスを提供しております。海外の旅行会社に訪日ツアーを手配するランドオペレーターを主事業とし、旅行現場でインバウンド観光客の「生の声」を聞き出す定性分析を得意としております。

Comments

comments

お問い合わせ
新着調査データ